──請負(受託)型との違いは?
ラボ型開発は、従来の請負型開発のように「完成品を納品する契約」ではなく、専属チームを期間単位で確保する契約形態です。これにより、必要な時に必要なスキルを持つエンジニアを柔軟にアサインでき、事業の成長段階や市場の変化に応じて体制を拡張・縮小することが可能になります。外注先ではなく、自社の一部として育てられる“第二の開発部門”を海外に持つ感覚で活用できるのが特徴です。
ラボ型開発は単なる「外注の安い手段」ではなく、企業が直面する人材不足や変化対応の課題を解決するための開発体制です。
国内だけで開発リソースを確保し続けるのは難しくなっており、スピード・柔軟性・継続性をどう担保するかが企業競争力を大きく左右します。
<本章のポイント>
✔ 日本の深刻なIT人材不足を補う「現実的な選択肢」
✔ リソースの最適配分によるコスト効率化
✔ 新規事業やスピード経営を支える仕組み
日本では少子高齢化やDX需要の高まりにより、IT人材の需給ギャップが年々拡大しています。経済産業省の試算では、2030年に最大79万人の人材不足が起こるとされています。
ラボ型開発はこの課題を解消する現実的な手段です。海外の若く優秀なエンジニアを専属チームとして確保し、国内で採用困難な人材を補完できます。さらに「必要なときに必要なスキルを確保できる柔軟性」があるため、事業フェーズや市場環境に応じた最適なチーム編成が可能です。
自社の内製リソースだけでは、新規開発と既存運用を同時に進めるのは困難です。結果として「やりたいことはあるのに開発が止まる」というジレンマが生じます。
ラボ型開発は、海外に「第二の開発部門」を持つ感覚で利用できるため、国内チームが企画・要件定義に集中しつつ、並行して開発を進められます。これにより事業のスピードを落とさず継続的に進化させることが可能になります。
単発の請負契約では、プロジェクトが終われば知見やノウハウは外部に流れてしまいます。しかし、ラボ型開発は専属チームとの長期契約を前提としているため、自社の業務や文化を深く理解したチームが継続的に成長します。
これにより、単なるコスト削減手段ではなく、自社にとっての「知識資産」を育てる仕組みとして機能するのです。長期的には、外部リソースに依存するのではなく、自社の開発力を拡張する投資と言えます。
ラボ型開発のメリットは「コストが安い」だけではありません。むしろ本質は、事業環境の変化に対応できる柔軟性と、長期的に競争力を高める仕組みにあります。
国内人材に依存するだけでは難しいスピードやスケーラビリティを、海外の専属チームという形で実現できるのがラボ型の強みです。
<本章のポイント>
✔ プロジェクト規模に応じて変化できるスケーラビリティ
✔ 予測可能なコストと効率的なリソース配分
✔ 専属チーム化による学習効果と業務理解の深化
ラボ型開発の最大の強みは、必要に応じて人員やスキルを増減できる柔軟性にあります。国内採用では、人材確保や育成に時間とコストがかかり、すぐにリソースを増やすことは困難です。
一方、ラボ型では現地に確保されたエンジニアプールから、プロジェクトに必要なスキルセットを短期間でアサイン可能です。急な仕様変更や事業フェーズの転換にも対応しやすく、「必要な時に必要なだけ」チームを拡張できる点は国内体制では得にくいメリットです。
ラボ型開発は月額固定費でチームを契約するため、コストの予測が容易です。請負型開発のように追加機能や仕様変更のたびに費用が膨らむ心配が少なく、中長期的なコスト管理がしやすいのが特長です。
さらに、国内の高コスト人材に単純作業をさせるのではなく、オフショアチームに適切にタスクを分配することで、リソース配分の効率化が可能になります。結果として、単なる「安さ」以上に、投資対効果を最大化できる開発体制を実現できます。
請負型と異なり、ラボ型では同じメンバーが継続的にプロジェクトに関わるため、ドメイン知識や自社特有の業務プロセスが蓄積されるメリットがあります。
プロジェクトを重ねるほど理解度が深まり、仕様説明の手間が減り、開発スピードも向上します。さらに、「自社専属の海外開発部門」という感覚でチームを育てられるため、長期的な競争力を育てることにつながります。
ラボ型開発は柔軟性や継続性で多くのメリットがありますが、万能ではありません。
契約の特性や運用体制を理解せずに導入すると、想定外のコストやマネジメント負荷が表面化するリスクがあります。ここでは、導入前に必ず押さえておきたい代表的なデメリットを整理します。
<本章のポイント>
✔ 稼働が減ってもコストは発生する「稼働率リスク」
✔ コミュニケーション・管理に手間がかかる
✔ 成果責任の所在が不明確になりやすい
ラボ型開発は「専属チームを確保する契約」のため、プロジェクトのタスク量が減ってもコストは発生し続けるという側面があります。
短期案件や一時的な開発では、チームを遊ばせる期間が増え、コスト効率が下がってしまいます。そのため、ラボ型開発を導入する際は、長期的にタスクが発生する案件やプロダクト改善を前提としたプロジェクトに向いていると考えるべきです。
請負型開発と異なり、ラボ型では顧客側がプロジェクト管理に積極的に関与する必要があります。定例ミーティングや進捗確認、バックログ管理など、コミュニケーションの頻度と質を維持しなければ成果が出にくくなります。
また、海外拠点との時差や文化の違いがあるため、プロジェクトマネージャーやブリッジSEなど、橋渡し役を配置する体制づくりが不可欠です。
ラボ型開発は「リソース提供型」であり、「成果物保証型」ではありません。つまり、開発チームはタスクを遂行する責任は負いますが、最終成果物の責任までは契約上負わないケースが多いのです。
ここを理解せずに「請負型と同じ成果保証」を期待すると、責任の押し付け合いにつながります。契約時には、成果物の品質や納期をどう定義するか、誰が最終責任を持つかを明確にしておくことが重要です。
ラボ型と請負型はどちらも外部に開発を委託する形ですが、契約の性質も、進め方も、成果責任の所在も大きく異なります。
この違いを理解しないまま契約すると、「思っていたのと違う」と感じるトラブルの原因になります。ここでは両者の違いを3つの切り口で整理します。
<本章のポイント>
✔ 契約形態の違い:リソース契約か成果物契約か
✔ 運営スタイルの違い:共同推進か丸投げか
✔ 適用シーンの違い:変化対応か固定要件か
ラボ型開発は、エンジニアの稼働を期間単位で確保するリソース契約です。月額費用を支払うことで「専属チーム」を持ち、発生するタスクを柔軟に割り当てられます。
一方、請負型は成果物の納品をゴールとする契約です。仕様を確定し、納期と予算を決めてから作業が始まります。契約責任の重心が「人材」か「成果物」かという点で明確に分かれます。
ラボ型開発では、顧客側が開発マネジメントに深く関与します。要件の優先度を調整したり、タスクを細かく割り振ったりと、共同で進める「一体型」のスタイルです。
一方、請負型は仕様を渡せばあとは委託先が進行し、顧客側の関与は最小限。「丸投げ」できる安心感がある反面、仕様変更や軌道修正には弱いという特徴があります。
ラボ型開発は、変化が多く、要件が固まりきらない案件に向いています。SaaS開発や新規サービス立ち上げ、アジャイル型の開発などに適しています。
請負型は、要件が明確で、完成形が見えている案件に向きます。例えば会計システムの改修や、法令対応に基づいたシステム更新など、変動要素が少ない開発に有効です。
ラボ型開発は、万能な仕組みではなく、特に効果を発揮するプロジェクトの条件があります。
要件が変わりやすい案件や、長期的に改善を重ねるサービス開発などに強く、一方で短期・単発の案件ではデメリットが目立ちます。
<本章のポイント>
✔ 要件が流動的で、変更が前提となる案件
✔ 継続的な改善が必要な長期プロジェクト
✔ 特殊スキルを取り込みたい先端領域の開発
スタートアップや新規事業の立ち上げでは、要件が市場検証によって頻繁に変わります。請負型のように「最初に仕様を固めて納品する」前提では対応が難しく、追加費用もかさみます。
ラボ型開発なら、仮説検証を繰り返しながら開発を継続できるため、MVP開発やリーンスタートアップとの相性が非常に良いのが特徴です。
SaaSや社内基幹システムは、リリース後もユーザー要望や法改正に応じて機能改善を繰り返す必要があります。
ラボ型開発は、専属チームを継続的に確保できるため、「運用と改善を一体化」した開発体制を構築可能です。短期ではなく長期で事業を成長させたい企業に適しています。
AI、IoT、メタバース、ブロックチェーンなど、国内では採用が難しい先端領域の人材を確保したい場合にもラボ型開発は有効です。
現地のエンジニアプールから必要なスキルを持つ人材を確保し、「国内では手に入らない技術力」を短期間でチームに取り込める点は大きな強みです。
ラボ型開発は「専属チーム確保」が前提のため、稼働が減っても契約期間中はコストが発生します。これが最大の不安要素ですが、解決策は「契約設計」にあります。
例えば、中途解約条項の有無、チーム規模を段階的に調整できるかなどを最初に確認しておけばリスクを最小化できます。失敗する企業はここを曖昧にしたまま契約しているケースが多いのです。
結論から言えば、仕組み次第で国内以上の品質を出すことも可能です。専属チーム化により、業務知識が蓄積されていくため、むしろ請負型よりラボ型開発の方が、安定する場合もあります。
ただし、前提は「管理の仕組み」があること。コードレビュー、テスト設計、品質KPIをきちんと共有しなければ、期待通りの成果は得られません。品質は国ではなくプロセスで決まるというのが本質です。
よくある誤解は「言語が通じれば問題ない」という考え方です。実際は、文化や価値観の違いによる認識のズレが大きな壁になります。
その解決策が、ブリッジSEや日本人PMの存在です。彼らは単なる翻訳者ではなく、開発プロセスの両側を理解し、認識をすり合わせる役割を担います。さらに、定例会議や共通ドキュメントの整備で「距離を縮める仕組み」を作ることが重要です。
ラボ型開発が力を発揮するのは、要件が揺れ動くプロジェクトです。「人が足りない」や「コストを下げたい」ではなく、市場ニーズが未知数なのか、技術選定が不安なのかといった“不確実性の正体”を言語化することが第一歩です。
契約書の条件だけでは、現場は動きません。重要なのは、日々の運用ルールを先に決めておくことです。定例ミーティングの頻度、バックログの優先順位を誰が決めるか、品質レビューをどう担保するか。こうしたルールを具体化し、それを契約に落とし込むことで、現場と経営の認識を揃えることができます。
「まだ依頼するか決めていない」「要件がはっきりしていない」といった段階でも問題ありません。
弊社でのソフトウェア開発の進め方や体制のご相談など、少しでも気になることがあれば、お気軽にご連絡ください。
櫻井 岳幸
Managing Director
開発予算や要件以上に「どうやって開発後の成功に近づけるか」をお客様と一緒に考えます。まずはご相談ください!