新たなビジネスの構築や、既存ビジネスのDXにおいて欠かせない存在となったのが、母国以外でソフトウェア開発を行うオフショア開発。
では、オフショア開発において人気国とは、実際にどの国が挙げられるのか、そこにはどんな特徴があるといえるのでしょうか。
そこで、2026年最新情報を元にした、オフショア開発先の人気国ランキング5選を解説します。
17年以上海外でオフショア開発ビジネスを実践してきた弊社の経験から、日本企業にとってのオフショア開発先の人気国だけでなく、世界におけるオフショア開発先の人気国とも比較することで、何がオフショア開発国において選ばれる要素なのかについても説明します。
◆本ページの目次
Toggle日本から見た:人気オフショア開発先1位〜5位
まず日本国内にある日本企業からみてオフショア開発の人気国は、オフショア開発.comが出している「オフショア開発白書」が参考となります。
この白書では、実際にオフショア開発を利用している企業などへアンケートを実施し、発注先が多い国の割合を紹介しています。よってこの割合の多い国が、日本企業からみてオフショア開発の人気国という見方もできます。
2026年1月21日には、オフショア開発白書の2025年版が公開されており、そこに掲載されたTop5とその主な理由を簡単に挙げるなら以下の通りです。
1位:ベトナム(43%)
⇒日本語対応を含む人材の豊富さ、時差やアクセスの利便性
2位:中国(21%)
⇒過去からの経緯、人材の豊富さ、時差やアクセスの利便性
3位:インド(14%)
⇒人材の豊富さ
4位:バングラデシュ(5%)
⇒比較的安価
4位:フィリピン(5%)
⇒時差やアクセスの利便性
なお、これら上位5ヵ国だけで、全体の88%を占めており、日本企業の大半がオフショア開発においてこれらいずれかの国を利用していることが分かりますね。
世界的に見た:人気オフショア開発先1位〜5位
では、日本企業に限らず、世界的に見た場合は、どうなのでしょうか?
こちらについては何か世界的にリサーチされた統計データがあるわけではありませんが、以下の様な観点から推測できます。
ITエンジニア需要が高い発注元となる国を考えると、まず様々なITビジネスを生み出している国アメリカが大半を占めるでしょう。
続いてアメリカよりは少ないものの、イギリス、フランス、ドイツといったヨーロッパの先進国においてオフショア開発が利用されていると考えられます。
よって、この欧米(特にアメリカ)にとってのオフショア開発先国が、世界で見た時のオフショア人気国と考えられます。
具体的にTop5にあたる国名と、その主な理由を簡単に挙げるなら以下の通りです。
1位:インド
⇒過去からの経緯、人材の豊富さ、英語圏
2位:ポーランド
⇒過去からの経緯、時差やアクセスの利便性
3位:ベトナム
⇒人材の豊富さ、比較的安価
4位:フィリピン
⇒比較的安価、英語圏
5位:ブラジル
⇒比較的安価、時差
では、以上にあげた国々の詳細を見ていきます。
国別比較で見えたオフショア開発先を決める「決定的な差」とは?
日本から見た場合でも欧米から見た場合でも、何がその国をオフショア開発先として選ぶ際に決定的なポイントとなる、差が生じるのでしょうか。
まずは、日本企業から見たTop5に挙げた国々についてもう少し詳しく見ていきます。
日本からみて1位にベトナムが選ばれる理由
こちらは別記事でも書いた通り、「日本語対応人材の豊富さ」「日本との時差、日本からのアクセスのしやすさ、営業日数の多さ」「日本から見てのカントリーリスクの小ささ(親日、政治的安定性、さらには街の治安)」などが挙げられるポイントです。
そして、もちろんオフショア先国ですので、その前提にあるのはIT人材の豊富さ(国策として育成している事)があるのは言うまでもありません。
日本からみて2位に中国が選ばれる理由
中国が選ばれている理由としては、90年代末~2000年代頃からBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)やソフトウェア開発拠点として選ばれてきたという過去からの経緯があります。当時、日本よりも人件費が安く、日本語人材も豊富であり、何よりも日本の隣国としてアクセスがしやすい点が大きなメリットでした。
また近年では、BATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)に代表される様に高い技術を持ったエンジニアも多く、AI開発などにおいても経験を積んだ人材が多いという特徴があります。
しかし近年、特にコロナ禍以降の地政学リスクや両国関係などを踏まえて、他国へ開発拠点を移転させる動きが出ているのも事実です。
日本からみて3位にインドが選ばれる理由
インドは世界的に見た時にオフショア先国として上位に上がる国であり、母数となる人口も世界1位である様にITエンジニアの数も豊富です。
国土も広いことからエンジニア単価などの地域差も大きいため、インド国内でも選択肢が豊富といえます。そして人材が多いという事は、比較的規模の大きな開発チームの構築がしやすいというメリットがあります。
発注元の企業が英語対応できるのであれば、コミュニケーションしやすいというのも選ばれる理由でしょう。
日本からみて4位にバングラデシュが選ばれる理由
バングラデシュの特徴としては、IT人材のコスト面(安さ)が挙げられます。国全体として若い人口が多く、ITエンジニアを目指す層も多いことから供給が多いことによる単価の安さという面もあるでしょう。また発注元の企業が英語対応できるのであれば、コミュニケーションが取れるという点は、インドと同じです。
技術レベルでは、下流工程を担当する人材の割合が多いことや、インフラ(ネット回線・電力事情)、政治的安定性(デモや政変といったカントリーリスク)といった特徴がどのように評価されるのか次第で、今後、人気オフショア開発国としてさらに上位に上がるかもしれません。
日本からみて同4位にフィリピンが選ばれる理由
フィリピンの特徴としては、地理的に日本に近いことから、日本との時差、日本からのアクセスのしやすさという点が挙げられます。
また英語圏であるため、発注元の企業が英語対応できるのであれば、フィリピンを選ぶという日本企業も多いはずです。
では続いて欧米企業から見たTop5に挙げた国々の選ばれる理由も見ていきます。
欧米からみて1位にインドが選ばれる理由
インドは、英語圏であるためアメリカなどから見た際にコミュニケーションが取りやすいこと、人材の豊富さ、人件費の安さなどで、最初はBPOとして活用が始まりました。日本企業にとっての中国のような存在かもしれません。
そしてソフトウェア開発においても特にコスト面の安さから、大手IT企業が続々と進出し、世界におけるソフトウェア開発大国、オフショア開発国としてNo1の存在となっています。
日本でも特にインド南部バンガロールでのソフトウェア開発が盛んなことは報道などで聞いたことが多いと思われます。
欧米からみて2位にポーランドが選ばれる理由
ポーランドはドイツの隣国であり、イギリスやフランスといった国からもアクセスがしやすく、タイムゾーンが同じである為、時差無く仕事ができるという特徴があります。(イギリスとも時差は、わずか1時間です)
また元共産圏(東欧)の国でもあるため、賃金水準(特に2000年代や、2010年代)は西欧の先進国よりもだいぶ安く、結果的に安価にソフトウェアが作れることもソフトウェア開発拠点として選ばれてきた理由でもあります。
なお同じような理由で2021年くらいまでオフショア先として注目されていたのが、ポーランドよりもさらに安価に開発できる近隣国、ウクライナやベラルーシといった国々です。しかしながら2022年のロシアによる軍事侵攻、ウクライナ戦争開始後、カントリーリスクが顕在化してしまい状況は大きく変わってしまったとも言われています。
欧米からみて3位にベトナムが選ばれる理由
ベトナムは日本企業からだけでなく、欧米企業のオフショア開発先としても人気を集めている国です。その理由は、国を挙げて国策としてIT人材を輩出していることや、安定性(上記、ウクライナやベラルーシに見られるようなカントリーリスク)、そして欧米企業から見て安価であることです。
特に、対ドルに対してベトナムドンの為替レート推移は、若干波はあるものの、長期的には下落(ドン安)傾向となっており、この点は日本企業から見た場合のオフショア開発先国ベトナムと大きく異なる点でもあります。
欧米からみて4位にフィリピンが選ばれる理由
上記ベトナムと同様にフィリピンも欧米企業のオフショア開発先として人気を集めている国です。
IT人材が多いことや、欧米企業から見るとかなり安価であることに加えて、英語圏である為、コミュニケーションをしやすいという特徴があります。
特にインド(といってもエリアによって格差が大きいですが)の人件費がだいぶ上がってしまったことから、英語+安価という点でフィリピンを選ぶ会社も多いと言われています。
欧米からみて5位にブラジルが選ばれる理由
ブラジルでのオフショア開発先として選ばれる大きな要素は、アメリカから見た時の時差にあると考えられます。
ブラジルの大半(首都ブラジリア、サンパウロ、リオデジャネイロなど)は、協定世界時より3時間遅れた、GMT-3が適用されています。
そしてアメリカのニューヨークやワシントンDCといった東海岸(東部時間)は、GMT-5(夏時間はGMTー4)です。
よって時差は1~2時間となります。
同じアメリカ東海岸と比べた場合、オフショア開発先の人気国であり英語圏でもあるフィリピンとは12~13時間、インドとは10時間30分〜11時間30分もあります。
そして英語圏ではないベトナムとも11~12時間の時差があることから、オンラインMTGやCHAT(Slack)など、リアルタイムのコミュニケーションが難しいのと比べ、ブラジルはこの1~2時間という時差の面で優位性があると言えるでしょう。
またブラジルの通貨レアル(BRL)も波があるものの、2010年頃の1USD=1.6~1.8BRLから、2026年2月現在の1USD=5.18BRLへと長期的に下落しており、それが現地エンジニアの単価上昇をある程度緩和し、アメリカから見た時のコスト面でのメリットもあると考えられます。
自社に合ったオフショア開発先国をどう見極めるべきか?
これまで述べてきたように、各国それぞれに特徴(メリット・デメリット・リスク)があり、選ばれる理由も異なります。では、数ある選択肢の中から自社に最適な国を選ぶにはどうすればよいのでしょうか?
結論から言うと、最も重要なのは「自社のビジネスにおいて何を重視し、どこを妥協するのか(優先順位)を明確に整理しておくこと」です。
具体的には、以下のような観点で自社の要件を洗い出してみましょう。
- 言語・コミュニケーション
日本語の必要性: 日本語対応は必須か?社内に英語で対応可能な人材がいれば、妥協できるポイントになり得ます。
求めるレベルと人数: 開発規模に応じて、どの程度の日本語能力を持つ人材が、何人くらい必要なのか。 - 時差と稼働時間
チャットやオンラインMTGでのリアルタイムなやり取りは必要か?必要な場合、日本側の営業時間とどの程度被る必要があるのか。 - 現地へのアクセス
現地訪問の予定はあるか?頻繁に訪問する場合、直行便の有無やビザなし渡航の可否といった「アクセスのしやすさ」が重要になります。 - コストとカントリーリスクのバランス
コストを重視して安価な国を選ぶ場合、クーデターや紛争といったカントリーリスク(ビジネスの継続性)も併せて考慮する必要があります。
「要件の整理」こそが成功への第一歩
「何を開発しようとしていて、自社にとって何がどのくらい重要なのか」を整理するこのプロセスこそが、オフショア開発を始める最初の一歩と言えます。
事前に評価の軸を明確にしておくことで、開発会社を探す場合でも、自社拠点を設立する場合でも判断がブレることがなくなり、オフショア開発の成功率は大幅に高まるでしょう。



