こんにちは。ベトナム・ホーチミンで2008年から17年以上オフショア開発事業を展開するVitalify Asia(バイタリフィアジア)の石黒です。
2026年1月現在、日本企業を取り巻く環境は、かつてないスピードで変化しています。経済産業省が警鐘を鳴らした「2025年の崖」を通過し、レガシーシステムの刷新やデジタルトランスフォーメーション(DX)の成否が、企業の生存競争に直結するフェーズに突入しました 。
また日本国内のIT人材不足は深刻さを増しており、2030年には最大で79万人が不足すると予測されています 。もはや日本国内のリソースだけでDX需要を賄うことは物理的に不可能です。
こうした中、かつて「安価な下請け場所」「コスト削減先」と見なされていたベトナムオフショア開発は、今どのような変貌を遂げているのでしょうか?
本記事では、2026年の最新の調査データや各種報道及び、現地ホーチミンでの実感から、ベトナム市場の構造変化、最新のコスト動向、そして日本企業が採るべき戦略について紹介します。
◆本ページの目次
Toggle2026年の市場概況:ITエンジニアの供給地としてのベトナムの実態
かつてベトナムは、中国に次ぐ「チャイナ・プラス・ワン」の文脈で、コストメリットのみが注目される存在でした。しかし、過去10年以上にわたるベトナム政府主導のデジタル化推進と教育投資が結実し、その立ち位置は激変しています。
2026年現在、ベトナムは世界のITアウトソーシング市場において「優れた選択肢(Superior Option)」としての地位を確立しています。
ICT産業における労働力全体では150万人に達し、そのうちソフトウェア開発に特化した人材は約53万人を数えます 。
また市場の成長という面でもベトナムのIT市場は、年平均成長率(CAGR)12.23%で拡大を続けており、世界的な経済不確実性の中にあって極めて高い成長力を維持しています 。
そしてもう1つベトナムの強みとして上げられるのは、その人口動態にあります。エンジニアの約58%が20代(Z世代およびミレニアル世代)であり、彼らは大学在学中からAIやクラウドコンピューティングなどの最新技術に触れてきた人材です。
古い技術の保守に追われることの多い日本の現場とは対照的に、ベトナムには新しいテックスタック(NodeJS, React, Python/Django等)を使いこなす人材が豊富に供給されています。
コスト構造の劇的変化:もはや「激安」ではない
「円安が進み、ベトナムの人件費も上がっている。まだコスト面でメリットはあるのか?」 これは、私たちへ頻繁にいただく質問の1つです。
結論から言えば、「単純な安さ」を求めるならベトナムは最適解ではなくなりつつありますが、「投資対効果」で見れば依然として最強の選択肢と考えられます。
為替レートやアサインする人材のスキル、場所、提供する会社の役務内容によって変動しますが、以下は、現在のホーチミンにおける人月単価の一例です。円安に加えて賃金上昇、インフレ率(年3~4%)により、日本円換算時の人月単価は、数年前に比べて上昇しています 。
| 職種 / レベル | 2026年初頭一例 (月額-人月単価) | 傾向と背景 |
| ジュニア (経験1-2年) | 40万 – 55万円 | スキル底上げにより上昇 |
| ミドル (経験3-5年) | 60万 – 75万円 | 安定的な需要あり |
| シニア (経験5年以上) | 80万 – 100万円 | アーキテクチャ設計能力への対価 |
| ブリッジSE (BrSE)/PM | 80万 – 120万円 | スキルや経験などによりばらつきが大きく、ハイエンド人材は、供給不足により高止まり |
| AIエンジニア | 100万 – 200万円+ | スキル次第でもあるが優秀な人は、国際的に人材の奪い合いとなっている |
この「人月単価」を日本、例えばエンジニアの絶対数が多い東京都内と比較すると、こちらもスキルや経験にもよって大きく変わりますが、シニアクラスですと年収800万円〜1,500万円といった給与水準になる場合もあります。また構造的に人手不足である日本では、高い金額でオファーしても、よりブランド力のある他社に奪われてしまうなど、採用困難なケースは珍しくありません 。 またエンジニアの人件費だけでなくそれを管理する人材の人件費や、採用費用を含めた販管費などもかかってきます。
それゆえ開発チームを構築・維持する為のトータルコストという視点で考えれば、仮に同等のスキルセットを持った開発チームで考えると、日本よりもコストを抑えることができると考えています。
つまり2026年のベトナムオフショア活用における経済合理性は、単価の絶対額の安さではなく、「同一予算内で、いかにハイスキルなチームを組成できるか」というパフォーマンスの高さにあると我々は考えています。
グローバル比較:なぜ「インド」や「フィリピン」ではなく「ベトナム」なのか
世界にはインド、フィリピン、中国、東欧など多くのオフショア拠点があります。
その中で、なぜ日本企業にとってベトナムが最適解であり続けるのかを、簡単に比較したのが下記表です。
| 比較項目 | ベトナム | インド | フィリピン | 中国 |
| 時間単価 | 中 | 低〜中 | 低 | 高 |
| 日本語力 | 非常に高い | 極めて低い | 低い | 高い |
| 親日性・文化 | 勤勉・親日 | 自己主張強 | 欧米化 | ビジネスライク |
| 対日時差 | -2時間 | -3.5時間 | -1時間 | -1時間 |
| 地政学(カントリー)リスク | 低 | 中 | 低〜中 | 高 |
上記内容から、日本企業から見た時に3つの点で、ベトナムが最も相性が良い国であることが分かります。
1つ目は「日本語」です。
ベトナムは、世界中のオフショア開発国の中でも日本語人材(ブリッジ人材)が多いという特徴があります。日本企業、日本人としては、苦手とする英語で開発内容や修正内容を指示し、無理にコミュニケーションを取らざるを得ない事よりも、日本語で意思疎通できる、それを対応可能な人材が比較的に多いことは、インドやフィリピンにはない決定的な強みとなります。
2つ目は「時差」です。
日本との時差がわずか2時間である為、オフショア開発先のエンジニアとリアルタイムに会話やCHATツールなどでやり取りをしながら開発を進めることが可能です。例えば、ベトナムの営業時間が8時半~17時半とした時に、日本時間は10時半~19時半となります。日本から見た時に朝は若干遅めですが、フレックスなどのコアタイムに被ることが多く、残業などで多少遅くなってもベトナム側の営業時間と被る事が多いです。
またベトナムは日本よりも祝日が少ないため、1年間で見た時に日本よりも開発時間を長く取ることができ、日本国内からのアクセスのしやすさ(直行便の多さ、ビザ無しで入国ができる)点も評価されているポイントです。
3つ目は「カントリーリスク」です。
世界中のオフショア開発国には、ベトナムよりも単価が安い国が存在します。例えばミャンマーやバングラデシュといった国は、一時期単価の安さで注目を集めていました。しかしここ数年で見た時に、政変、クーデター(内戦)といった出来事が発生し、それに伴ってインターネット回線を通じたやり取りが不安定化したり、先が読めない状況になったことは記憶に新しいところです。また中国は日本語人材が多いものの、日中関係、政治的な影響を受けやすく、中国国内の開発先からのアクセスや、現地で様々なデータを扱うことに不安を感じる方も多いと考えられます。
ベトナムは、一党独裁であるが故の政治的な安定性があり社会的に安定している一方、中国とは異なり各種インターネットサービスへのアクセスの自由度が高く、また日本人、日本企業から見ての政治的なリスクも低いため、最も合理的な選択肢となる国です。
これら3つの点が日本企業にとってオフショア開発先としてベトナムが選ばれる理由でもあります。
2026年ベトナムオフショア開発の勝ち筋
では、ベトナムオフショア開発をうまく活用できている、オフショア開発が成功しているという日本企業にはどのような特徴があるのでしょうか?
これまでの様に下請け先として単に人月工数を提供する(確保する)場所という位置づけではなく、サービスの企画段階からベトナムチームが参画して一緒に作り上げる「共創型」へのシフトが進んでいます 。
なぜそのサービスを作るのかという意義や目的、サービス開始後はどうやってビジネスを成立させようと考えているのかを開発開始前からベトナムメンバーへ共有頂きます。
そしてMVP(Minimum Viable Product)を短期間で開発し、市場のフィードバックを受けながら改善していくアジャイルなスタイルで進めていくやり方です。
ベトナム人エンジニアの高い自律性と新しいツールへの適応力が、これを可能にしています。
また2026年、開発が増えると考えられるのは、以下の領域です。
AIとオートメーション:
生成AIを用いたチャットツール(音声や動画でのコミュニケーションを含む)や、画像認識、RPAによる業務自動化。
クラウド移行:
AWSやAzureなどのクラウドネイティブな環境構築と運用 。
製造業DX:
工場の稼働監視(SCADA)や生産管理システムなど、製造業の現場を知るベトナムならではのソリューション 。
大手企業では、住友商事がベトナムで開発したDXサービスを東南アジア全域に展開したり 、イオンが店舗運営のデジタル化を現地で完結させるなど 、ベトナムを開発の場としてだけではなく、「実証実験の場」として活用する動きも加速しています。
ベトナムオフショア開発の「リスク」と「対策」
一方でオフショア開発でうまくいかなかった、失敗事例も数多く存在します。
日本企業が直面する主な課題は以下の通りです。
1. 賃金上昇とジョブホッピング
ベトナムの8%を超えるような経済成長が今後も続くと予想され、引き続きITエンジニアの賃金自体は上昇していくと考えられます。また優秀な人材ほどより良い条件を求めて転職(ジョブホッピング)する傾向も、人材市況の波によって変動することはあっても、根本的には変わらないでしょう。
対策としては、単なる給与だけでなくキャリアパスの提示や魅力的な技術環境を提供し、エンゲージメントを高める「リテンション施策」が不可欠です。
Vitalify Asiaでは、エンジニアが長く働きたくなる、成長できると感じられる環境づくりにも注力しています。
2. コミュニケーションの「質」の違い
日本はハイコンテクスト(言わなくても察する)文化ですが、ベトナムはローコンテクスト(明示的な指示が必要)な文化です。
曖昧な仕様書は、意図しない成果物を生む原因となります 。また、理解していなくても「Yes」と言ってしまう文化的な癖もあります 。
対策としては、Yes」の後に「具体的にどう理解したか」を説明させる確認プロセスを徹底することが必要と考えています。そして、要件定義をベトナム側に丸投げせず、日本側にプロダクトオーナー(PO)を立てて密に連携することが成功の鍵でもあります。
ベトナムオフショア開発企業に求められるのは「付加価値」の提案へ
2026年1月時点においては、ベトナムオフショア開発が、もはや「安く作るための下請け」ではありません。
日本国内のリソース不足を補完し、グローバル競争を勝ち抜くための「戦略的イノベーションパートナー」であると我々は考えています。
以前と比べた時にコスト増という逆風はありますが、それを補って余りある「IT人材の豊富さ」「新しい技術を吸収する人材」「日本から見た時に最適なパートナー国」というメリットがあります 。
また大事なことの1つは、オフショア先として 「どこに出すか」ではなく、「どう関わり、どう共に成長するか」。そのマインドセットの転換ができる企業にとって、ベトナムは無限の可能性を秘めたフィールドとなるでしょう。
「自社のDX課題はベトナムで解決できるのか?」 「最新の技術スタックに対応できるチームを作りたい」
そのようなお悩みをお持ちの際は、ぜひVitalify Asiaにご相談ください。 長年の実績とナレッジに基づき、貴社のビジネスゴールに最適な開発体制をご提案いたします。


