円安禍でもベトナムオフショア開発が選ばれる理由|2026年最新版

この記事を書いた人

バイタリフィアジア/取締役 - 営業部門管掌
石黒 健太郎

東南アジア駐在13年。複数国での拠点立ち上げから経営までを歴任。ベトナムでのシステム開発の勘所から最新ビジネス事情まで、現地在住者ならではの視点で発信している。趣味はバックパッカー旅行。自らの足で稼いだリアルな情報も交え、企業の海外進出を後押しする。

海外でのシステム開発について詳しくしたい方向け

この5年ほどで1ドル100円近辺から160円近辺まで大きく下落し、日々の為替レート変動と合わせて関心が高まっている「円安」。ベトナムという日本国外でソフトウェア開発を行うオフショア開発においても、現地でのエンジニアの給与水準上昇に加えて、この円安による影響が大きく出ています。

それでも日本企業がオフショア開発先の国を選ぶ際、No1であるのは、ベトナムであり、圧倒的に選ばれ続けています。

弊社でも昨年2025年にて数百件以上のオフショア開発相談からの依頼背景や17年以上ベトナムでオフショア会社を経営してきて感じる市場の感覚から、円安禍でもベトナムオフショア開発が選ばれる理由について解説していきたいと思います。

1. 円安でオフショア開発の何が変わったのか?

かつてベトナムオフショア開発と言えば、日本に比べて圧倒的低コスト(低単価)でソフトウェア開発できることが大きなメリットの1つでした。

既に十数年前となりますが、弊社(バイタリフィアジア)のラボ型開発でもエンジニア単価で人月27万円と、日本に比べて3分の1のコストカットを売りにしていた時期もあります。

しかしベトナムの経済成長やインフレなどによってエンジニアの給与は年々上昇しており、スキルや経験、勤務場所によって異なるものの、弊社エンジニアでいうと平均的な給与水準は、ドルベースで見た場合でも十数年前の3~4倍以上となっています。

また為替レートについても米ドルと日本円では、2010年代前半の超円高(1ドル70円台後半)から、2010年代後半には1ドル100~110円の水準に下落し、さらに最近では1ドル150~160円と十数年で半額にまで下落しました。

ベトナムの通貨であるドンもドルと比べた場合は緩やかに下落していますが、日本円とベトナムドンとの関係で見た場合、日本円の価値が大きく下落しています。

下記は、1円が何ドンに相当するのかの推移をここ10年で見たグラフです。

通常のドル円のチャートと異なり、グラフの上に行くほど円の価値が高く(例えば1円が220ドンの価値)、グラフの下に行くほど円の価値が低い(例えば1円が160ドンの価値)ことを表しており、日本円の価値が大きく下落したことが分かります。

*https://tradingeconomics.com/jpyvnd:curより

円安進行前から進んでいたエンジニアの給与水準及び、現地での運営コスト(家賃など)は、2020年代以前においては日本円に換算した場合でも緩やかな上昇となっていました。

しかし近年(特に2022年以降)の円の急落により、日本に比べて人月単価の圧倒的な安さをベトナムオフショア開発のメリットとして打ち出すことは、優秀なエンジニアの確保が容易な大都市でのオフショア開発において、不可能になったと言えるのではないでしょうか。

2. 低価格帯のオフショア企業の撤退が増加

既に述べたビジネス環境の変化(円安進行)に伴って、コストメリット(エンジニアの人件費・人月単価安さ)だけを売りにしたオフショア開発会社や、自社開発拠点として子会社を設けていた会社などは、ベトナムから撤退しています。

撤退の場合、進出時と異なりニュースとして大きく発表されることはなく、また撤退理由も開示されないため、統計データとして何社撤退したのかが分からず、実態が見えづらいです。

しかしその一面が伺える場所があります。それがM&A仲介会社によるベトナムITオフショア開発企業の売却案件です。

「ベトナム×ソフトウェア開発会社×売却」などのキーワードで検索すると、以下のような結果でした。
*2026年1月末日時点での著者の検索結果

この様に様々なM&A仲介会社で、ベトナムオフショア開発企業の譲渡希望が掲載されています。

例えば、売却案件を検索できるバトンズ社のサイトで検索してみると、以下の様に譲渡希望先の受託開発企業が数多く掲載されています。

こういったサイトに掲載されている会社の全てが円安が理由で売却(譲渡希望)となったわけではないですが、売り上げ規模が数千万円と小規模な会社も多いため、円安という環境の変化に対する経営体力の面では影響が大きいと考えられ、それが売却(譲渡希望)に繋がったのではないかと考えられます。

3. オフショア開発先にベトナムが選ばれる理由は「事業課題の解決」の手段

今まで見てきたように単純な「人月単価」という点では、圧倒的な安さを打ち出せなくなったベトナムですが、2026年1月21日に発表された最新版の「オフショア開発白書2025」このオフショア開発委託先国別ランキングにおいて、日本企業のオフショア先として引き続きベトナムは1位であり42%、2位の中国21%に比べて2倍以上のシェアとなっています。

その理由は、何でしょうか?

理由1:日本語人材の豊富さ

「オフショア開発白書2025」26ページ目には、オフショア開発企業を選定する際に日本企業が重要視したポイントが複数挙げられています。

その中でも一番数値が高く、最も重視されるポイントが「日本語のレベル(コミュニケーション力)」でした。エンジニアの実績やスキルセットといった項目よりも高い数字であり、同白書に書かれているように「言語的な安心感が技術力以上に選定の決め手となるケースが増えている」事を示しています。

では実際にベトナムは他国に比べて日本語人材が多いのでしょうか?

国際交流基金が2025年9月3日に発表した「2024年度 海外日本語教育機関調査 結果概要」によると資料9ページ目には日本語学習者の多い国の上位10ヵ国があり、ベトナムは6位で164,495名があるものの、タイは19万を超え、インドネシアは73万を超えています。

次に、学んだ日本語をどの程度ビジネスとして使えるのかを証明する日本語能力試験の受験者数を見てみます。

日本語能力試験を運営するJPLTのサイト内の「2025年 第1回(7月)データ」内にある「実施国・地域別応募者数・受験者数」の3ページ目には、日本語学習者の多いインドネシア、タイ、ベトナムのN1~N3といったグレードごとの受験者数が載っています。

日本語能力としてビジネスで使うとなると仕事内容にもよりますが、N1もしくはN2といったレベルを必要とするケースが多いです。

この受験者数は、

  • インドネシア:N1(864名)、N2(2,312名)
  • タイ:N1(1,109名)、N2(2,053名)
  • ベトナム:N1(3,179名)、N2(6,963名)

と圧倒的にベトナムが多いことが分かります。

もちろん受験者数=実際に合格できた人ではありませんが、ベトナムにおける日本語学習者は、仕事で日本語を使いたいと思っている人の割合が多く、それがオフショア開発における日本語人材、日本語でコミュニケーションを取れる人材の豊富さに繋がっていると言えるのではないでしょうか。

理由2:日本人にとって仕事しやすいビジネス環境 ~「時差」「営業日」「アクセス」~

ベトナムと日本との時差は、2時間であり日本の営業時間と被りやすいという特徴があります。例えばベトナムの就業時間が8~17時である場合、日本では10~19時であり、リアルタイムのオンラインMTGが実施しやすいです。

日本の祝日は世界的に見ても多い年間16日分あり、祝日に加えて年末年始やお盆の時期などの休業日も加えるとさらに短くなります。

一方でベトナムの祝日は年11~12日分であり、祝日の旧正月前後も会社としての休業日設定ではなく、社員が個別に有給休暇を取るなどして調整するケースも多いため、同じ期間でも実質的な稼働日数が多くなるため、より多くの生産ができるといった特徴があります。

また意外と見過ごせないポイントは、日本の各都市からベトナムへのアクセス、出張のしやすさがあります。

2025年時点で日本の各都市から、ベトナムへの直行便フライトは、週に約130〜140往復と言われており、日本国内では、成田、羽田、関西、名古屋(中部)などに加えて、福岡、広島といった地方空港も含めた各都市から直行便が飛んでおり、ベトナムの3大都市であるハノイ、ダナン、ホーチミンとを結んでいます。

また日本国籍であれば、ビザ無しで最大45日間滞在できるため、短期出張などもしやすい環境にあり、日本食レストラン、日系のコンビニ・スーパー、生活用品の販売店なども豊富で、夜間でも外出できる治安の良さなどから安心して滞在できる環境があります。

理由3:カントリーリスクの低さ

日本とは異なるという点で近年より注目されている点が、カントリーリスクという観点です。

例えばここ数年で見てもデモや暴動などが発生し、インターネットや各種ネットサービスなどが遮断された国が多々あり、2026年1月に発生したイラン全土でのネット遮断なども記憶に新しいところです。

また軍によるクーデターを期に、一部エリアでは内戦状態となりそれが継続しているミャンマーや、隣国からの軍事侵攻を受けて現在も戦争中のウクライナといった国もあります。

さらに日本人、日本企業という点で考えると、中国における反スパイ法などのリスクや、両国の政治的に問題が発生しやすい国であること、また顧客データや自社サービスの個人データなどを中国で扱っている場合、流出の可能性も含めて懸念する声や風評リスクもあり、これらもある意味、同国を使う上でのカントリーリスクと言えます。

こういったリスクが顕在化した場合、たとえコストが安かったとしても、予定されていたソフトウェアが不可抗力として納品できなくなる、その後メンテナンスもできなくなるなど、経済的に大きな損失を被る事にもなります。

ベトナムにも、もちろん発展途上国であるが故のカントリーリスクはありますが、

  • 一党独裁が故に政治的に安定している
  • 政治的に日越関係は良好である
  • 日本人/日本企業というだけで襲われる可能性は低い
    (例:反日デモなどが行われていない)

といった点などから、他国に比べてリスクを低減し事業をできるといった面があります。

4. ベトナムをオフショア開発先に選んだ企業の共通点は何か?

既に述べてきたように人月単価の絶対値の安さだけを目的として、オフショア開発にベトナムを選ぶ時代は終了しています。一方で「ベトナムでしかできない」「ベトナムだからできる」「ベトナムにする必要がある」といった理由でオフショア開発先に選ぶケースは今後も増えていくと考えられます。

具体的には、以下の5つのケースに該当する企業ではないでしょうか。

1. 「量」を確保をしたいケース:数十人〜百人規模の開発体制をすぐ作りたい企業

日本国内のエンジニア不足は2026年時点でさらに深刻化しており、どれだけ予算があっても「そもそも人が採用しづらい」状況にあります。

そういった中、ベトナムは依然として若年層エンジニアの人口が多く、日本国内では数年かかるような「50〜100人規模のエンジニアチーム」(その中には日本語対応可能なブリッジ人材を含む)を数ヶ月で組成できる余力があります。

多少単価が高くても「開発スピード」と「将来さらに拡張可能な規模のあるチームを作り」を最優先したい、例えば、急成長中のSaaS企業や、大規模なDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する大企業などです。

2. 「質」を確保したいケース:AI・データ分析など先端技術を求める企業

ベトナムでは、過去何年にもわたり国家戦略としてAI教育や理数系教育に力を入れてきました。その結果、トップ層の技術力は日本のエンジニアを凌駕する様なケースも増えています。

そこで日本では、知名度や所在地などの関係で採用が難しい「ハイスキル層」をベトナムで採用していくというやり方です。

よって単なるコーディング(実装)ではなく、アーキテクチャ設計やAIモデルの構築など、付加価値の高い業務を任せるパートナーとしてベトナムを選ぶケースであり、 AI活用、データサイエンス、ブロックチェーンなどの先端技術領域に取り組む企業などが該当します。

3. カントリーリスクを避けて安定稼働を重視したい企業

他の安価なオフショア候補国と比較した際、ベトナムの「政治的・社会的安定性」を評価する企業があります。

弊社にも過去、ミャンマーで開発を行っていたが軍事クーデター後、継続できなくなったので移管したいといった相談もありました。またベトナムでも停電は日本よりは多いものの、ホーチミンなどの都市部では件数が過去よりも減っており、ベトナムよりも発展途上の国と比べた際、ベトナムの方がインフラは安定していることも評価されています。

こういった会社にとっては、多少コストが高くても「BCP(事業継続計画)観点で最も安全な海外拠点」としてベトナムを選んでおり、金融、インフラ、エンタープライズ系など、プロジェクトの中断が許されない企業などが該当します。

4. 意思疎通「日本語コミュニケーション」のしやすさを重視する企業

コストよりも「コミュニケーションコスト(手間)」の削減を重視する企業もあります。

日本語対応人材が少ない国(英語圏のフィリピンや、安いけど日本語人材が少ないバングラデシュ等)では、英語でやり取りすることが必要になりますが、発注元に英語での指示体制を構築する余裕がなかったり、現場担当者が日本語しか話せない日本企業も多いです。

一方で既に述べてきた様にベトナムは長年のオフショア実績により、「日本語を話せるブリッジSE(システムエンジニア)」や「通訳」のエコシステムが世界で最も成熟しています。

他の安価な国へ移行して苦労するより、「日本語が通じる環境」に対価を払うほうが合理的と判断する企業などが該当します。

5. ベトナムを「市場(マーケット)」としても見ている企業

単に開発拠点としてだけでなく、将来的な収益拠点としてのベトナムを意識している企業も増えてきました。

ベトナムは、昨年年8%の成長をし、今後数年間は毎年10%の経済成長という目標を掲げており、現地所得の上昇と、 約1億人の人口がある国です。

ベトナムへの足がかりとして、まずは開発拠点を置き、現地事情に精通した人材を確保し、ゆくゆくは現地向けサービスを開発する、「市場参入の前段階」としてオフショア開発をしようという企業などが該当します。

5. オフショア開発は「安く作る手段」から「事業基盤」へ

昨今の円安は、日本企業にとって「オフショア開発」という概念をそもそも変えていくものになっているのではないかとも考えられます。

ソフトウェア開発に限らず、製造業も含めて、かつて日本企業のアジア進出と言えば、日本に比べて安く作れる場所・コストを削減できる場所、そういった場所への進出という位置づけが多かったと考えられます。

しかし現在の為替レート、円安状況は、円の実質実効レートで見た場合、半世紀前の1970年代と同じ程度とも言われており、一方でアジア各国は経済成長により確実に豊かになっていき、国及びエリアによっては、日本人よりも豊かになっています。

こういう経済状況の変化を踏まえると、オフショア開発は安く作る事をまず主としておくのではなく、日本国内で確保が難しいものを調達できる場所、つまり今後事業を継続していくうえでの基盤を確保するという位置づけになるのではないでしょうか。

例えば、日本国内は、石油など化石燃料を海外からの輸入に頼っていますが、別に安いから買っているわけではなく、日本国内で調達できないから海外で生産されたものを輸入しています。そしてこれについて皆、疑問に思うことはないはずです。

同じ様にIT人材(開発リソース)も、既に日本国内では人口減などにより確保が難しい以上、海外(オフショア)を活用する。そして海外でかかったコスト以上の付加価値のある財・サービスを世の中に提供し、社会の発展に貢献する。

そういった観点から、日本企業のビジネスにおいてオフショア開発は、今後も欠かせない存在であり、ベトナムはその中でも最良の場所=ビジネスパートナー国であると考えております。

SHARE:
X
Facebook
LinkedIn

お問い合わせ

ご相談ベースでも構いません
オフショア開発の第一歩をサポートします

お問い合わせ

「まだ依頼するか決めていない」「要件がはっきりしていない」といった段階でも問題ありません。
弊社でのソフトウェア開発の進め方や体制のご相談など、少しでも気になることがあれば、お気軽にご連絡ください。

櫻井 岳幸

Managing Director

開発予算や要件以上に「どうやって開発後の成功に近づけるか」をお客様と一緒に考えます。まずはご相談ください!

Vitalify Asiaでのオフショア開発
3分で特徴がわかる!