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| ・まず、大規模・基幹系や品質重視の開発は、日本語人材が豊富で堅実なハノイが向いています。
・一方、スマホアプリ・Webサービスなどスピード重視のアジャイル開発は、最新技術に強いホーチミンが向いています。 ・ただし地域差以上に、依頼先の開発会社の実績・得意分野のほうが結果に影響します。したがって、まず自社の重視点を明確にすることが重要です。 |
ベトナムの2大都市といえば、北部にある首都ハノイと、南部にある経済都市ホーチミンです。
そして日本企業のオフショア開発先として、一番人気のある国がベトナムです。しかし検討の際、多くの企業が直面するのが「ハノイとホーチミン、どちらの会社へ依頼すべきか」という点です。
そこで今回は、北部(ハノイ)と南部(ホーチミン)の特徴や違いを、一般的な傾向からデータまで交えて比較します。オフショア開発先の選定にあたって、ご参考になれば幸いです。
1. ベトナムオフショア開発の二大拠点:ハノイとホーチミン
ベトナムのIT産業は、首都である北部の「ハノイ」と、最大の商業都市である南部の「ホーチミン」を中心に発展してきました。
たしかに、どちらの都市にも優秀なITエンジニアが集まっています。ただし歴史的な背景や進出企業の違いから、それぞれ独自のITカルチャーが形成されてきました。
そこでまずは、それぞれの人材の特徴から見ていきましょう。
1-1. ハノイ人材の特徴
ベトナムの首都ハノイは、政治と教育の中心地です。
なお日本では、ベトナムを南国とイメージしがちです。しかしハノイを含む北部では、冬(12月〜2月)は気温が10℃前後まで下がります。つまりコートが必要になるほど冷え込む地域です。
このように北部では、冬の寒さを乗り切る必要があります。さらに冬がある関係で、1年中作物が採れるわけでもありません。そのため「将来に備えて計画を立てる」「資源やお金を蓄える」「厳しい環境に耐える」という思考が、南部よりも根付いていると言われます。
また歴史的には、隣国である中国の影響を受けてきた地域です。例えば科挙などの影響から、勉学に励む文化があります。加えて社会主義体制の期間も南部より長く、その教育の影響が強いとされます。さらに政治の中心地という地域性もあり、組織や規律を重視する傾向があると言われます。
よって一般的にハノイ人材のキーワードを挙げるなら、勤勉・慎重・計画的・堅実・長期的視点・組織や規律の重視といった点になります。
言い換えれば、真面目で規律を重んじる気質は、日本の伝統的なビジネススタイルと親和性が高いとも言えます。
1-2. ホーチミン人材の特徴
これに対し、ベトナム南部のホーチミンは経済の中心地です。
南部は年間を通して暑く、そのため1年中作物が収穫できます。まじめに耕作をしなくても、椰子の実が自然に成って落ちてくるような環境です。つまり極端に言えば、防寒にも食べ物にも困りません。だからこそ「何か楽しいことをしたい」という風土が育まれました。
そしてフランス植民地時代に「サイゴン」として開発されたのが、現在のホーチミンです。ヨーロッパと国際航路で直接つながっていたため、新しいモノ(製品・サービス・文化・制度・技術)が常にベトナムへ最初に入ってくる場所でした。しかもそれは南ベトナム時代も、南北統一後の経済開放以降も同じです。
例えば、現在のベトナムで社会インフラとなっているライドシェア(配車アプリ)も、2014年にホーチミンから最初にサービス展開されました。
このような環境から、貯蓄よりも今を楽しむ楽観的で大らかな気質が育まれました。さらに、新しいものに素早く飛びつく柔軟性も特徴です。
よって一般的にホーチミン人材のキーワードを挙げるなら、明るい・開放的・楽観的・スピード感重視・ビジネス/トレンド志向・柔軟でチャレンジ精神旺盛といった点になります。
つまり、新しい技術を使ったサービスやビジネスの立ち上げと、親和性が高い環境とも言えます。
では、これら2地域の人材の特徴を踏まえて、オフショア開発という視点で見ていきましょう。
2. ハノイのオフショア開発の特徴:手堅さと高品質
まずハノイには、ベトナム最高峰の理工系大学である「ハノイ工科大学」をはじめ、優秀な教育機関が集中しています。そのためアルゴリズムや数学的基礎に優れ、論理的な思考を得意とするエンジニアが多い地域です。
また特徴として、地域内での日本語学習者がホーチミンよりも多いという点があります。
具体的には、JICA(国際協力機構)のWEB内で公開されている調査(公益財団法人東亜総研・株式会社グローバルウィザス共同企業体作成「ベトナム国北部における日本語人材の養成に係るニーズ確認調査 調査完了報告書 2024年12月」)の5ページ目に、ベトナムの地域別日本語学習者数が掲載されています。
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このうち注目すべきは、高等教育(大学)と学校教育以外(日本語学校)での学習者数です。該当箇所を抜粋すると、以下のとおりです(各年時点の数値)。
- 2015年
- 高等教育:ハノイ8,738人、ホーチミン3,712人
- 学校教育以外:ハノイ9,900人、ホーチミン16,199人
- 2018年
- 高等教育:ハノイ13,510人、ホーチミン10,343人
- 学校教育以外:ハノイ62,527人、ホーチミン31,784人
- 2021年
- 高等教育:ハノイ22,127人、ホーチミン12,342人
- 学校教育以外:ハノイ57,850人、ホーチミン17,174人
高等教育では一貫してハノイの学習者が多く、学校教育以外でも2018年以降はハノイが上回っています。なおハノイの学校教育以外には、日本への技能研修生が含まれると考えられます。
結果として、日本語人材と呼ばれるブリッジSE(BrSE)やIT通訳(ITコミュニケーター)が豊富です。この点が、日本企業向けのオフショア開発における強みとなります。
2-1. ハノイの人材が得意とする開発領域
これまで述べた特徴を踏まえると、ハノイ人材が得意と考えられる領域は次のとおりです。仕様書に沿って正確に作り上げるウォーターフォール型の開発、ミスやバグが許されない品質重視の開発、長期的な開発・保守案件などです。
豊富な日本語人材も活用でき、例えば次のような開発で特に強みを発揮すると考えられます。
- 大規模なエンタープライズシステム・基幹系システム
- 金融機関・官公庁向けのシステム
- 製造業向けの組み込みソフトや車載システム
3. ホーチミンのオフショア開発の特徴:スピードと最新技術
一方ホーチミンには、南部最高峰の理系難関大学である「ホーチミン市工科大学」があります。ハノイ工科大学と並ぶ国内トップクラスであり、多くの理系人材を輩出しています。
またベトナム最大の経済都市であるため、日本企業だけでなく欧米・中国・韓国・台湾・シンガポールなど世界中の外資系企業が集まっています。そしてそれが大きく影響しているのが、ITエンジニアの給与水準の高さです。
具体的には、日本のマイナビの子会社で、ベトナムのITエンジニア求人メディア「ITViec」が出す「IT Salary & Recruitment Market Report 2025-2026」の51ページ目に、近年の平均給与が掲載されています。

それによると2025〜2026年の平均給与は、ホーチミンが4,490万ドン、ハノイが4,050万ドンです。つまりホーチミンの方が高く、しかもこの傾向は2022年から継続していることが分かります(表に記載はないものの、それ以前も同様とされます)。
さらに同レポートの24ページ目には、ITエンジニアがどの都市で雇用されているかのデータも掲載されています。ホーチミンが7割を超えており、そのため求人の活発さがうかがえます。

よってホーチミンには、より高い給与やチャンスを求めて、新しい技術や開発スタイルの経験を積んだ野心的なITエンジニアが集まっています。言い換えれば、欧米企業やITスタートアップで揉まれた人材が多いとも言えます。
3-1. ホーチミンの人材が得意とする開発領域
これまで述べた特徴を踏まえると、ホーチミン人材が得意と考えられる領域は次のとおりです。すなわち要件が変わりやすい新規事業の開発、最小限の機能だけを作るMVP(Minimum Viable Product)開発、新製品の研究開発(R&D)、そしてスピードが求められるアジャイル開発などです。
加えてデザインやUI/UXへの意識も高く、ユーザー目線のプロダクト作りを得意とするエンジニアが多く存在します。そのため、次のような開発で特に強みを発揮すると考えられます。
- スマートフォンアプリ開発(iOS / Android)
- Webサービス・ECサイト・SaaSプラットフォーム
- AIや最新フレームワークを用いた開発
4.【比較】自社プロジェクトにはどちらを選ぶべきか?
ここまで述べた特徴を踏まえ、両都市の違いを一覧にまとめると以下のようになります。
| 観点 | ハノイ(北部) | ホーチミン(南部) |
|---|---|---|
| 人材の気質 | 勤勉・慎重・計画的・堅実・規律重視 | 明るい・楽観的・スピード重視・柔軟 |
| 得意な開発 | ウォーターフォール型/品質重視/長期保守 | アジャイル型/MVP・R&D/スピード重視 |
| 向くプロジェクト | 大規模・基幹系、金融・官公庁、組込み | スマホアプリ、Web/EC/SaaS、AI・新規事業 |
| 日本語人材 | BrSE・IT通訳が豊富(高等教育で一貫して多い) | 相対的に少なめ(近年は増加傾向) |
| IT給与水準 | ホーチミンより約1割低い | 国内最高水準(2022年以降ハノイを上回る) |
| キーワード | 手堅さ・高品質 | スピード・最新技術 |
続いて、どのようなプロジェクトにどちらが適しているかを、より具体的に見ていきます。
4-1. ハノイをおすすめするケース(品質・手堅さ重視)
(1)仕様が明確に決まっている大規模開発
まず、要件定義がしっかり固まっており、仕様書通りに正確に開発を進めたい(ウォーターフォール開発)場合です。
(2)長期的な保守・運用・ラボ型開発
次に、離職率が比較的低いため、同じチームでコツコツと長くシステムを育てたい場合です。
(3)日本語での緻密なコミュニケーションが必要
そして、日本側のSIerと同じ感覚で、細かなニュアンスまで日本語でやり取りしたい場合です。
4-2. ホーチミンをおすすめするケース(アプリ開発・スピード重視)
(1)スマートフォンアプリやWebサービスの新規立ち上げ
まず、ユーザーの反応を見ながら柔軟に機能を追加・変更していく「アジャイル開発」の場合です。
(2)UI/UXデザインや最新トレンドを取り入れたい
次に、機能要件だけでなく、見た目の美しさや使い勝手を重視するBtoC向けプロダクトの開発の場合です。
(3)スタートアップ・新規事業開発
そして、とにかく早く市場にプロダクトを出し(MVP)、仮説検証を繰り返したいスピード重視の場合です。
5. まとめ
以上、ベトナム・オフショア開発における「ハノイ」と「ホーチミン」の違いを解説しました。大きな傾向としては、次のとおりです。
- ハノイは「真面目で手堅く、大規模・基幹系システムや品質重視の開発」に強い。
- ホーチミンは「トレンドに敏感で、アプリ開発やWebサービスなどスピード重視のアジャイル開発」に強い。
ただし地域以上に開発へ大きく影響する要素は、依頼先のオフショア開発会社の経験や得意分野です。
そのため重要なのは、自社が依頼したい内容は何か、そして開発にあたって何を重視するのかを明確にし、開発会社へ提示することです。
なおベトナムのオフショア開発会社は数が多いため、最初にコンタクト先を絞り込む際には、本記事のような一般的傾向が参考となれば幸いです。
参考データ
・JICA公開「ベトナム国北部における日本語人材の養成に係るニーズ確認調査 調査完了報告書」(2024年12月)
・ITViec「IT Salary & Recruitment Market Report 2025-2026」
※給与・学習者数は各レポート公表時点の数値です。


