オフショア開発とニアショア開発との違い|要望別に選び方を解説

この記事を書いた人

バイタリフィアジア/取締役 - 営業部門管掌
石黒 健太郎

東南アジア駐在16年超、複数国で拠点立ち上げから経営までを歴任。ベトナムでのシステム開発の勘所から最新ビジネス事情まで、現地在住者ならではの視点で発信している。趣味はバックパッカー旅行。自らの足で稼いだリアルな情報も交え、企業の海外進出を後押しする。

別メディアで東南アジアの経済、歴史も解説しています

海外でのシステム開発について詳しくしたい方向け

連日の様にニュースで目にするAIを使った新しい技術やサービスを自社の業務に取り入れたい、新しいサービスや商品を作りたい、ビジネス環境の変化に適応するためにもデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めたい。

しかし自社内には、開発チームが無い、開発チームがあってもエンジニアが不足していて新たな開発は難しい。

このような悩みを持った日本企業において選択肢としてなりうるのが、外部リソースの活用です。具体的には、日本国外で開発をする「オフショア開発」と日本国内の地方で開発をする「ニアショア開発」という言葉を聞いた方も多いでしょう。

そこで今回は、オフショア開発、その中でも特に圧倒的な人気を誇るベトナムでのオフショア開発と日本国内ニアショア開発との違い、単価やコストなどの違い、そしてどのような開発プロジェクトにおいてどちらが望ましいのかといった観点で解説します。

1.いまさら聞けない「オフショア開発」「ニアショア開発」とは?

ITエンジニア不足を解決する外部リソースの活用方法として1度は、どこかで耳にしたことがあると思われる言葉が、オフショア開発とニアショア開発です。まずはそれぞれの言葉の定義と特徴を整理しておきましょう。

1-1.オフショア開発とは?

オフショア開発(Offshore Development)とは、システムやソフトウェアの開発業務を海外の企業や海外拠点に委託する手法です。

かつては「労働力のコスト裁定取引」として位置づけられており、単に安いITエンジニアの労働力を求めて海外に開発を委託するというビジネスモデルでした。

例えばベトナムにおいても日本と比較して3分の1のコストで開発が可能だった時代も存在します。

しかし現在では、現地での経済成長に伴うエンジニア給与水準の上昇に加えて、近年の円安進行もあり、2026年時点ではコスト面でのメリットから開発リソース確保や、将来的な現地進出も見据えての開発拠点という形へと変化しています。

オフショア開発の委託先国には様々な国があるものの特に日本企業の間では、ベトナムが圧倒的な第一候補に選ばれ続けています。

1-2.ニアショア開発とは?

ニアショア開発(Nearshore Development)とは、開発業務を海外ではなく、日本国内の地方都市の企業に委託する手法です。

同じ日本国内であっても東京では人件費に加えてオフィス賃料なども高く、結果、ソフトウェア開発費もその分だけ高くなります。

そこで東京から離れた地方都市で開発をすることで、人件費やオフィス賃料などの費用を抑えて開発費用を安く提供できる形態がニアショア開発となります。

具体的には北海道や沖縄、東北、四国、九州などでの開発です。

オフショア開発との大きな違いは、「日本国内」であることです。

言語の壁なく日本語でコミュニケーションができて、日本円で契約するので為替リスクもない、そして同じ日本国内なので時差もなく祝日も同じで、カントリーリスクもないというのが大きなメリットとなります。

2.オフショアとニアショアを開発単価で比較すると

オフショア開発、ニアショア開発共にそもそもの始まりは、東京での開発と比べた際の単価の安さ(コスト削減メリット)にありました。では現在、コストや単価感はどうでしょうか?

ベトナムでもどの場所(都市)でどのような開発を売りにしている会社なのかや、エンジニアのスキルによって幅が大きいです。よって以下は、現地で活動している弊社が見聞きしている一例を上げますと

  • エンジニア:3,300ドル~5,000ドル(約52.8万~80万円)
  • ブリッジSE(日本語可能):4,000ドル~5,500ドル(約64万~88万円)
  • PM:6,500ドル~10,000ドル(約104~160万円)

といった金額感になります。(為替レートは1ドル=160円で計算しています)

ニアショアの場合ですが1年前にオフショア開発.comに掲載されていた一般社団法人ニアショア開発推進機構の「エンジニア単価情報レポート」からのデータによると

  • プログラマーが52.8万円〜63.5万円
  • シニアエンジニアが68万円〜75.2万円
  • PMが85万円〜104万円

とあります。ニアショアにおける単価は、あくまでも一般論ではありますが東京に比べて70~80%くらいの単価感とも言われています。仮に間を取って75%と考えるなら、東京での単価は単純計算で

  • プログラマーが70.4万円〜84.7万円
  • シニアエンジニアが90.7万円〜100.3万円
  • PMが113.3万円〜138.7万円

となります。

スキルや経験、そして為替レートに応じて変わりますが、単純に単価だけで比較すると現時点では、ニアショアの方がベトナムオフショアよりも安く、オフショアの単価は、東京と近いか若干安いくらいになっていると言えるかもしれません。

オフショアの場合、円安による為替レートの影響も大きく、単価だけでみた安さという視点では、成立しなくなりつつあるといえます。

ただし汎用的な開発においてはニアショアの方が安いものの、AIなどの先端IT人材を確保して開発しようとした場合、そういった技能を持つ人材の豊富さという点からニアショアの単価では確保が難しいと考えられ、その部分では依然としてベトナムオフショア開発においてコスト優位性があると考えられます。

3.オフショアとニアショアをIT人材の豊富さで比較すると

では、開発にあたって必要なIT人材の豊富さという点ではどうでしょうか?

3-1.ベトナムオフショア開発の場合

ベトナムは国を挙げてIT人材の育成に努めており、最大手のFPT社が2026年2月12日に発表した「A Destination for Endless Possibilities」によると熟練したITプロフェッショナル人材が56万人以上いるとあります。なおIT人材(IT労働人口)だけでしたら同じ資料内に2024年時点で126万人とあります。

さらに2026年5月14日付けの最新の報道によると、副首相が署名した「2026年から2030年までのデジタル技術産業開発計画」において2030年までに10万社のデジタル技術企業の設立と、300万人以上の業界従事者の育成を構想とあります。上記FPT社の資料にあった2030年のIT人材150万人を2倍の300万人へと増やす、そんな野心的な計画が発表されました。

またAI開発などの高度な技能を持つ人材も増えています。NKKTech Global社が2026年4月29日に発表した「Vietnam AI Offshore Development: Reshaping Tech in 2026」では、ベトナムには50万人を超えるIT人材がおり、その内、8万5千人がディープラーニング、ニューラルネットワーク、AIオーケストレーションといった技能を持つ人材であること、2023年以降で340%増加したことなどが挙げられています。

IT人材が増えているだけでなく、より高度な技術力や知識を持っている人材も増えている、そんな状況が伺えます。

3-2.ニアショア開発の場合

2025年11月2日にITメディアで報道された「IT人材は東京のどこに住んでいる? 首都圏の“知られざるテックエリア”を地図で見る」によると、

総務省統計局「令和3年(2021年)経済センサス – 活動調査」から、「通信業」「情報サービス業」(システム開発など)、「インターネット附随サービス業」(クラウドサービスなど)にあたる約5.4万事業所のうち半数近くの2.6万事業所が首都圏1都3県に集中とあります。

また総務省統計局「令和2年(2020年)国勢調査」から、「システムコンサルタント・設計者」「ソフトウェア作成者」「その他の情報処理・通信技術者」という3つの職業にあてはまる人々は、全国に約125万人、そのうち76万人が首都圏に在住と紹介されています。

さらに近年、日本で働く外国籍のIT人材も増え、既に彼ら無くして日本国内におけるソフトウェア開発が成り立たない状況となっていますが、2026年4月17日に発表されたヒューマンリソシアの調査結果「10万人に迫るIT業界の海外人材、約8割が東京に集中」にある様に、新たに日本へと入ってくる外国籍の人材も首都圏に集中している状況です。

ニアショアは、首都圏ではない日本の地方都市で開発することでコストなどを抑えられる形態です。

それゆえ大半のITエンジニアが首都圏に集まっており、さらに地方でも進んでいる少子高齢化に伴う人口減や、首都圏へと若い人口が移動する社会減、外国籍労働者の流入も首都圏に集中しているという状況を考えると、IT人材の豊富さという面でニアショアは、ベトナムオフショアよりも大きく劣ると考えられます。

4.オフショアとニアショアそれぞれに合った開発とは?

では以上で述べてきたことを踏まえて、オフショア開発とニアショア開発を比べた時に、それぞれに合った開発内容とは何でしょうか?

4-1.オフショア開発に合った開発内容

(1)先端技術(AI・ブロックチェーン)を活用する開発:

近年ニーズの高まっている様々なAIサービスを組み込んだ開発(WEBアプリケーションやスマホアプリの開発)、場合によってはAIモデル自体を開発するようなケースです。

(2)スピードとスケーラビリティを重視する大規模開発:

ITエンジニアの豊富さを活かして多数のエンジニアを一度に確保し、日本国内では不可能なスピードでチームを立ち上げたい場合に最適と考えられます。

(3)研究開発(R&D)をする、新製品を作って素早く改善する開発:

何が正解か分からない中、短期間でソフトウェアを形づくり早期に市場投入をしたい、投入後も継続的に改善を繰り返すことでビジネスを成長させたい企業に向いています。

4-2.ニアショア開発に合った開発内容

(1)厳格な情報管理とデータ主権が求められる領域:

マイナンバーを扱う官公庁システムや、金融機関のコアバンキングシステムなど、データの国外持ち出しが法律や規定で禁じられている場合や、センシティブな個人情報などでその企業のポリシーにより海外へ持ち出しができないものを扱うケースです。

(2)日本特有の複雑さや暗黙知への依存度が高い業務システム開発:

日本特有の複雑な行政要件への適合、日本の商慣習や仕様書に現れない細かいニュアンス(阿吽の呼吸)の理解が必要なレガシーシステムの移行などにおいては、日本国内で行う開発が向いています。

(3)密接な連携と心理的安心感:

必要に応じて現地の開発拠点に出向き、直接顔を合わせて打ち合わせを行いたい場合、日本国内であれば費用や移動時間共に海外のオフショアに比べて低減できます。

5.オフショアとニアショアそれぞれで注意すべき点

2つの開発形態には、それぞれ特有のリスクが存在します。開発成功のためには、それぞれで多い失敗パターンに注意しておく必要があります。

5-1.オフショア開発の失敗要因と対策

オフショア開発でうまくいかなかった原因として挙げられる多くには、「コミュニケーション」が関係しています。

ベトナムのITエンジニアや日本語が話せるブリッジ人材は、非常に真面目ではあるものの日本の伝統的な「報・連・相」の文化に慣れておらず、トラブルを抱え込んだままとなって、結果、遅延するケースがあります。

また発注元でもこうして欲しかったというのが、正確に伝えきれておらず、出来上がってから発覚、それによって手直しという事も考えられます。

そこで対策方法の1つとしては、コミュニケーションの機会(例えば、デイリースクラムの実施)や、アクションアイテムを詳細に記録していつまでに誰が何をするなどのチケットシステムといったシステムを導入していき、こういった開発に関する運用を適宜見直して改善していくことが必要となります。

5-2.ニアショア開発の失敗要因と対策

開発が上手く行かなかった場合の理由には様々なケースが考えられますが、地方が故のIT人材が豊富でないことに起因する事が考えられます。具体的には、「リソースの枯渇」と「技術の陳腐化」です。

地方都市では採用市場が限定的なため、急な欠員が出た場合、補充が首都圏に比べて困難となることが多いと考えられます。また、最新の技術の習得に貪欲な人材は、首都圏など都市部に向かいやすい傾向もあるため、比較的レガシーな技術に縛られてしまう・・・結果、モダンな技術を使って開発したいという時に対応できる人材がいないというリスクがあります。

そこで対策方法の1つとしては、事前にエンジニア追加確保のルートをニアショア開発会社(ベンダー)と握っておくことです。

そして「口頭での指示」だけでできるとしてもそれに甘えず、要件定義や仕様をドキュメント化していく。これにより特定のニアショア開発会社への過度な依存(いわゆるベンダーロックイン)を回避することができ、必要に応じて他の会社も活用することができます。

6.結論

オフショアとニアショアは、どちらか一方が優れているのでどちらかを選ぶというものではなく、それぞれの特徴を理解したうえで、開発したい内容によって最適な方を選ぶ、もしくは強みを補完し合うのが望ましいと考えられます。

既に述べてきたように新しい技術を活用したモダンな開発チームを作りたい、短期間で大規模なスケールまでもっていきたいという事であればベトナムオフショア開発が向いていますし、データや開発内容として日本国内で完結する必要がある、開発費用において為替の変動を考慮することは難しいのであればニアショア開発が向いています。

そして開発内容に応じては、要件定義や顧客折衝、厳格なセキュリティ要件が絡む部分は日本国内のニアショアチームが担い、それ以外をベトナムのオフショアチームが担うというグローバルな分業体制も考えられるでしょう。

オフショアとニアショア、違いを理解したうえで適切な開発を選択され、その開発が成功に繋がることを願っています。

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櫻井 岳幸

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