【2026年】ベトナムオフショア開発単価|現在の費用相場を解説

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バイタリフィアジア
石黒 健太郎

東南アジア駐在16年超、複数国で拠点立ち上げから経営までを歴任。ベトナムでのシステム開発の勘所から最新ビジネス事情まで、現地在住者ならではの視点で発信している。趣味はバックパッカー旅行。自らの足で稼いだリアルな情報も交え、企業の海外進出を後押しする。

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結論

  • 平均給与、現地コスト構造、為替から推定した2026年の人月単価は、約61万円。
  • 市場環境は発注者側に有利なのでそれよりも安くなる可能性もある。
  • 経験が浅くスキルが低い人材なら計算上は、さらに安い単価も可能だが、短期的な入れ替わりによる生産性低下といった「見えないコスト」発生のリスクが高まる。
  • 安さだけを追求するとベトナム国内の優秀なITエンジニアを確保できず買い負けてしまい、本来の目的である「自社のビジネス拡大に必要な開発力(才能)確保」に影響する。
  • 人月単価の「絶対値の安さ」だけで判断するのではなく、「自社のビジネスにどのようなIT人材が必要なのか」を見極めることが本当の意味で開発成功のカギとなる。

 

2026年現在、日本企業を取り巻くIT環境はかつてないスピードで変化しています。経済産業省が警鐘を鳴らした「2025年の崖」を通過し、DX(デジタルトランスフォーメーション)の成否が企業の生存競争に直結するフェーズに突入しつつも国内のIT人材不足は深刻さを極め、2030年には最大79万人が不足すると予測されています。

こうした中、かつて「安価な下請け」「コスト削減先」と見なされていたベトナムのオフショア開発は、いまや「ビジネスを継続するうえで不可欠なビジネスパートナー」へと変貌を遂げています。

しかしベトナムでのオフショア開発にあたっては、かつての様な絶対的な安さが実現不可能となったとしても、そのコスト(人月単価)を気にしている日本企業は多いはずです。

そこで本記事では、各種調査データや現地での実感などを元に算出し、2026年8月の最新ベトナムオフショア開発単価について解説します。

1.オフショア開発白書に記載された人月単価

まずは、2025年末に公開され、2026年8月時点で最新版となる「オフショア開発白書(2025年版)」に掲載されている単価です。()内は、前年比です。

<表1>

役割 プログラマー シニアエンジニア ブリッジSE PM
単価 (万円) 40.1 (+1.8%) 50.0 (+3.5%) 59.0 (±0%) 71.4 (+2.0%)

 

各役割ごとに前年比で単価は上がっておりますが、昨今の円安などを考えると比較的抑えられているという印象をお持ちの方も多いかと思います。

なおこのデータは、同オフショア開発白書によると2025年8月1日~10月31日の期間にアンケート調査での回答より算出されました。よって正確には調査時点である2025年時点における単価となります。

オフショア開発白書に記載された単価は、ベトナムだけでなく他のオフショア開発国(中国、インド、バングラデシュ、フィリピン)などと同じ前提で比較する事ができるため、有用なデータの1つとなります。

しかしながら上記の平均された単価だけでは見えないものがあります。

同じベトナム国内でも地域によって金額差があり、ホーチミンやハノイといった大都市は給与が高いため人月単価も高くなり、一方で地方都市では大都市よりも比較的給与が低いため人月単価も低くなります。

例えば、日本からの直行便もある中部の都市ダナンでは、ホーチミンやハノイよりも人月単価の安さを打ち出している会社が多いことが知られています。

また同じプログラマーという役割であっても経験年数やスキルによって給与水準が大きく変わります。

2026年版のオフショア開発白書は、まだ発表されていないものの、2026年に入ってからの8ヶ月間の平均為替レートは、2025年の平均為替レートと比べると、ベトナムドンが日本円に対して約5.1%上昇している(円安傾向である)ため、円換算した人月単価は上昇している可能性が考えられます。

そして、そもそもオフショア開発白書のアンケートに回答をしていない会社の人月単価などは、反映されていません。

そこで人月単価の裏側にあるベトナムITエンジニアの平均給与、つまりは人月単価を構成する原価を見ていくことで、推定される2026年最新の費用相場(人月単価)を算出してみることにします

2.ベトナムITエンジニアの平均給与から推定する2026年の人月単価

ベトナム国内でIT人材を採用する際に利用されることが多い大手求人メディアにIT viecという会社があります。2019年に日本のマイナビに買収され現在は、その子会社です。

この会社では、ベトナムのIT人材に関する調査レポート「VIETNAM IT SALARY & RECRUITMENT MARKET 2025-2026」を出しており、そこに記載された平均給与を使って人月単価を算出します

2-1.大都市と全土の平均給与

調査レポート51ページ目には、ベトナム全土、ハノイ、ダナン、ホーチミンといった都市の平均給与が載っています。なお給与は、2025年の調査時点のものです。

これを2026年1月から8月にかけての日本円とベトナムドンとの平均為替レート(TTM、1ドン=0.006048円)で円換算したものと併記したのが下記金額です。

<表2>

地域 ベトナム全土 ハノイ ダナン ホーチミン
平均給与(ドン) 43,200,000 40,500,000 39,600,000 44,900,000
平均給与(円) 261,274 244,944 239,501 271,555

 

昨今の円安もあり、円換算した際の平均給与は20万円台の中盤から後半へと推移しています。

ではこの金額からベトナムオフショア開発における原価や費用、そして人月単価を出していきましょう。

2-2.平均給与からみる平均原価

まず平均給与=原価ではありません。日本と同じく社会保険料などの法定福利厚生費が発生し、かつ日本は労使折半ですが、ベトナムの場合、2:1の割合であるなど会社側の負担が大きくなります。

またベトナムでは1年に1度、旧正月(テト)の時期に、給与の1ヶ月分を追加支給するテト賞与(テトボーナス)と言われる商慣習があります。会社によっては、業績なども加味して数ヶ月分支給したり、入社時期に応じての個別調整などを行っていますが、ここでは一般論として1ヶ月分を支給するとします。この場合、毎月の原価には、テト賞与の12分の1の相当金額が加算されることになります。

以上を加味すると給与額にもよりますが、ざっと29%ほどの金額が平均給与に上乗せされ、それが毎月の原価となります。それを元に表にすると以下の通りです。

<表3>

地域 ベトナム全土 ハノイ ダナン ホーチミン
平均原価(ドン) 55,728,000 52,245,000 51,084,000 57,921,000
平均原価(円) 337,043 315,978 308,956 350,306

 

ホーチミンでは原価だけで35万円に達することが分かります。

2-3.販管費込みの平均費用

会社の経営にあたっては、原価に加えて販売費及び一般管理費(以下、販管費)と言われるコストがかかります。

何を原価とし、何を販管費とするかは、ビジネスの構造、つまり会社によって違いがありますが、今回はITエンジニアの人件費分(法定福利厚生費やテト賞与を含む)だけを原価、それ以外の費用を販管費として計算することにします。

では、ベトナムオフショア開発において原価に対する販管費の割合はどのくらいなのでしょうか?

日本企業向けにベトナムでオフショア開発(アウトソース事業)を手掛ける会社の中には、日本で上場している会社もありますので、過去5年分の公開されている各社の原価に対する販管費の比率の平均値を出すと、以下の様になります。

システムエグゼ社のみ、手に入ったデータが3年分であったので3年分の平均値です。なお各社共に、売上から売上原価と営業利益を差し引いた金額を販管費として算出しています。

<表4>

会社名 平均
ハイブリッドテクノロジーズ 45.72%
モンスターラボ 83.03%
Sun Asterisk 76.84%
システムエグゼ 32.20%
SHIFT 32.52%

 

原価に対する販管費の比率は、何を持って原価とするかが事業内容・構造に応じて変わるため、だいぶばらつきがあることが分かりますが、今回の計算にあたっては5社の中で中間に位置するハイブリッドテクノロジーズ社の45.72%を使うことにしました。またこの比率は、同業者としての実感においても理解できる数値であるためです。

原価に対する45.72%の販管費を元に1人当たりの人月単価におけるコスト、つまり利益0円の状態となる金額を算出すると以下の様になります。

<表5>

地域 ベトナム全土 ハノイ ダナン ホーチミン
平均費用(ドン) 81,206,842 76,131,414 74,439,605 84,402,481
平均費用(円) 491,139 460,443 450,211 510,466

 

上記を見るとベトナム全土でも約49万円、ホーチミンでは約51万円の人月単価を最低でも設定しないと費用を下回って赤字になってしまうことが分かります。

2-4.費用から推定される2026年の人月単価

なお通常、会社として事業を継続するには、利益を0で設定して考えることはできません。人月単価において利益率をどの程度設定するのかは、会社によって違いがありますが、仮に10%、20%、30%で設定した場合のそれぞれの人月単価は、以下の様になります。

<表6>

地域 ベトナム全土 ハノイ ダナン ホーチミン
人月単価(利益率10%の場合、円) 545,710 511,603 500,234 567,185
人月単価(利益率20%の場合、円) 613,924 575,553 562,763 638,083
人月単価(利益率30%の場合、円) 701,627 657,775 643,158 729,237

 

ベトナム全土では、50万円台中盤~70万円といった人月単価が見えてきます。そして忘れてはいけない点が、上記計算の基準となる平均給与データは、1年前の2025年の集計時点におけるものであることです。

2-5.インフレ率を反映させた場合の2026年の人月単価

2026年後半時点における人月単価を考えるうえで影響を与えるものにインフレ率があります。

日本でも最近物価高による賃上げ(給与上昇)がニュースとなっていますが、ベトナムの最近のインフレ率、消費者物価指数(CPI)の前年同期比での上昇率を見ると以下の通りです。

2025年11月が3.58%、12月が3.48%であったものの今年に入ってからインフレ率が上昇し、2026年上半期(1〜6月)の平均は4.38%、また2026年7月単月では、4.45%でした。背景には中東での戦争における世界的な資源高なども影響しています。

ベトナム政府は2026年のインフレ率を4.5%程度に抑制する目標を掲げており、ベトナム国家銀行(中央銀行)は年平均インフレ率を約5%(±0.5%)と予測しています。

よって仮に最低でも4.5%のインフレ率相当分だけITエンジニアの平均給与が上がった(ITエンジニアの購買力が維持された)と仮定するなら、2026年後半の人月単価の推定金額は以下の様になるはずです。

<表7>

地域 ベトナム全土 ハノイ ダナン ホーチミン
人月単価-2026年推定(利益率10%の場合、円) 570,267 534,625 522,745 592,708
人月単価-2026年推定(利益率20%の場合、円) 641,550 601,453 588,088 666,796
人月単価-2026年推定(利益率30%の場合、円) 733,200 687,375 672,100 762,053

 

ベトナム全土では、57万円~73万円といった人月単価が見えてきました。

2-6.最新2026年の人月単価をどう考えればよいのか?

ベトナムにおけるコスト構造から逆算して算出した人月単価(推定値)を算出すると上記の様になりました。

しかし考慮しなければいけない点は、人月単価の前提となる平均給与が必ずしもインフレ率分上昇するとは限らないことです。

同じIT viec社の調査レポートには、平均給与が前年と比べて何%上昇したのかが記載されております。そこで過去3年分のベトナム全土のITエンジニアの平均給与の上昇率とインフレ率(CPI上昇率)を比較したのが、下記表です。

<表8>

平均給与(ドン) 給与上昇率 インフレ率
2022年 32,400,000 3.16%
2023年 34,400,000 6.2% 3.25%
2024年 43,700,000 27.0% 3.62%
2025年 43,200,000 -1.1% 3.31%

 

調査レポートは2022年からのデータしかないため2022年のインフレ率との比較はできませんが、2023年以降では、インフレ率の何倍も上がっている年もあれば、昨年2025年の様に前年からインフレ率はあまり変わっていないのに対して、平均給与は逆に下がっているケースもあります。

2025年の給与下落の背景には、過去急激に上昇したことの反動及び、世界的なITエンジニアの需給も影響していると考えられます。

インドやフィリピンなど欧米向けに英語対応を売りにしたオフショア開発国で顕著となっている傾向ですが、AIによる代替によってスキルの低いエンジニアの給与が上がりづらくなっており、これがベトナムにおいても発生しています。

2026年時点におけるベトナム現地での肌感覚としても、このITエンジニアの給与が全般的に上がりづらく、かつ離職率が低下しているという傾向は、一部のスキルの高いエンジニアを除き、実感できるものです。

よって2026年後半時点における推定人月単価は、直近のインフレ率相当分を除外し、平均給与が上がらなかったとした場合の<表6>の金額をベースに考える、そして若干余裕(バッファー)を見て利益率20%相当の推定人月単価、つまりベトナム全土平均でいうと613,924円と考えるのが妥当ではないでしょうか。

3.地域・経験年数・役割ごとの推定人月単価

前章で見てきたように平均給与に対しての推定人月単価は、613,924 ÷ 261,274=2.3497…倍となります。つまり平均給与にこの倍率をかけることで、地域や経験年数に応じた人月単価を推定できることを意味しています。

そこでIT viecの調査レポート内に記載された平均給与額に、上記倍率をかけて算出した推定人月単価を見ていきましょう。為替レートは、これまでと同様に2026年1月から8月にかけての日本円とベトナムドンとの平均為替レート(TTM、1ドン=0.006048円)で円換算するとします

3-1.地域と経験年数ごとの推定人月単価

<表9-1>

経験年数 ベトナム全土 ハノイ
平均給与(ドン) 推定人月単価(円) 平均給与(ドン) 推定人月単価(円)
1年未満 1,470万 20.9万 1,160万 16.5万
1~2年 1,980万 28.1万 1,810万 25.7万
3~4年 3,120万 44.3万 2,760万 39.2万
5~8年 4,190万 59.5万 3,970万 56.4万
8年超 5,240万 74.5万 4,930万 70.1万

 

<表9-2>

経験年数 ダナン ホーチミン
平均給与(ドン) 推定人月単価(円) 平均給与(ドン) 推定人月単価(円)
1年未満 1,360万 19.3万
1~2年 1,360万 19.3万 2,120万 30.1万
3~4年 2,940万 41.8万 3,300万 46.9万
5~8年 3,860万 54.9万 4,320万 61.4万
8年超 4,790万 68.1万 5,400万 76.7万

上記の通りベトナムでは、ITエンジニアはスキルや経験に応じた給与格差が日本以上に大きいです。ベトナムで一番給与水準が高いホーチミンにおいても経験1年未満のジュニア人材、日本でいう新卒1年目の人材を使うのであれば、あくまでも計算上は2026年現在でも人月20万円を切る単価が設定できることになります。

しかしその後の上がり方が急であり、5年を超えると61万円を超え、8年を超えると76万円を超えてきます。

また上記は経験年数で算出されていますが、ベトナムオフショアの開発現場では、単に経験年数だけで給与が判断されるのではなく、本人の能力次第で半年間で給与を2倍にするようなケースがあります。

これは市場価値に合わせて給与を改定しないと、より良い機会を求めて他社へ転職してしまうからです。そしてそれは経験年数1年未満のITエンジニアであっても同様です。

よって安い人月単価でのベトナムオフショア開発(稼働時間を保証するラボ型契約、準委任契約)は、企業努力によっても実現できる可能性もありますが、比較的経験年数の浅いもしくはスキルが低めのエンジニアのアサイン可能性が高くなり、またアサインされているエンジニアが途中で入れ替わる可能性も高くなる、それによって都度、開発内容の把握などに時間が取られてしまい生産性に影響する(見えないコストが発生する)場合があることを考慮に入れておく必要があります。

3-2.役割と経験年数に応じた推定人月単価

続けてオフショア開発でアサインされる主な役割ごとで見ていきます。

なお調査レポートでは、これまでと異なり給与の平均値ではなく中央値(データを大きさの順に並べたときに、ちょうど真ん中に位置する値)とありますのでご注意ください。

(1)フルスタックエンジニア

Webシステムやサービスの開発において見た目を作る「フロントエンド」から、裏側の処理やデータ管理を行う「バックエンド」、さらにはサーバーやインフラの構築・運用まで、幅広い工程を一人でこなせるITエンジニアをフルスタックエンジニア(full stack engineer)と言いますが、彼らの経験年数ごとの給与から算出した推定人月単価です。

<表10>

経験年数 給与中央値(ドン) 推定人月単価(円)
1年未満 10,100,000 143,531
1~2年 20,350,000 289,194
3~4年 34,500,000 490,279
5~8年 41,800,000 594,019
8年超 44,800,000 636,652

 

こちらも経験年数に応じて差が大きいものの、ある程度経験があって任せられる人材であるなら50~60万円の人月単価が必要となってくることが分かります。

(2)モバイルエンジニア

現在の生活では必須となったスマートフォン上で動作するアプリを開発するエンジニアです。Android、iPhone、それぞれの環境上で動作するアプリを開発できる人材となります

<表11>

経験年数 給与中央値(ドン) 推定人月単価(円)
1年未満 14,150,000 201,085
1~2年 28,800,000 409,276
3~4年 29,050,000 412,829
5~8年 37,350,000 530,780
8年超 45,700,000 649,442

 

このモバイルエンジニアは、1年未満と1~2年で倍に上昇するものの、3~4年との間にはあまり差がありません。これは、おそらくは集計されたデータの偏りも影響しているのではと考えられます。

(3)プロジェクトリーダー・プロジェクトマネージャー(PM)

システム開発の全体計画から進捗、品質、コスト管理までを統括するプロジェクトの総責任者としての役割です。発注元の会社の要望をもとに要件を定義し、予算、納期、スケジュールを決定します。

<表12>

経験年数 給与中央値(ドン) 推定人月単価(円)
1年未満 17,200,000 244,429
1~2年 29,850,000 424,198
3~4年 48,400,000 687,812
5~8年 58,450,000 830,632
8年超

 

PMは、開発プロジェクトの成否にも関わってくる重要な役割であり、過去の経験も重要となってくる人材ですが、経験のある人材となると5~8年で約83万円とそれなりに高い人月単価となります。

なおこの調査レポートでの集計において、言語対応力(日本語能力)などは、含まれていないものと考えられ、日本語ができる人材の場合は、より高い給与=人月単価になると考えられます。

4.「推定人月単価」と「オフショア開発白書の人月単価」との違いから見えるもの

2026年のベトナムオフショア開発単価(推定人月単価)を見てきましたが、オフショア開発白書内の数字とだいぶ乖離があることを疑問に思う方もおられると思います。

ベトナム全土で見た時の推定人月単価(約61万円)は、経験年数で見た時の5~8年の人材の推定単価に近いため、オフショア開発白書における「シニアエンジニア」の単価(約50万円)が比較対象となりますが約20%ほど乖離があります。

差が生じるのは、集計時期や集計対象者が異なるため当然ではありますが、その背景にはここ1年でさらに急速に進んだ円安、円とドンで見た時においても約5.1%ほど円が安くなっていることに加えて、市場環境の変化(円安、AIによる代替etc)によるオフショア開発会社間での競争激化による値引きや単価下落といった事も影響し、推定値よりもだいぶ安くし、利益を削って(場合によっては赤字にしてでも)安い人月単価で仕事を受けているという、そんな背景があるものと考えられます。

実際に日本企業向けにベトナムオフショア開発(アウトソース)事業を手掛けている上場5社の営業利益率の推移を見てみると、ベトナムでのオフショア開発だけが原因かどうかはわかりませんが、前期にかけて営業利益率が低下している会社が多く、競争激化をうかがわせる数字です。(なお会社によって決算時期が異なるため、5期前~前期という形で比較しています。)

<表13>

会社名 5期前 4期前 3期前 2期前 前期
ハイブリッドテクノロジーズ 6.5 12.0 8.8 3.5 1.0
モンスターラボ -34.5 -2.7 -15.4 -102.7 -2.4
Sun Asterisk 17.6 8.4 14.2 10.6 7.1
システムエグゼ 7.3 5.6 6.5
SHIFT 8.7 10.7 13.1 9.5 12.0

 

一見この状況は、オフショア開発を依頼する日本企業(発注側)にとって安い人月単価で開発ができるため有利とも考えられますが、手放しで喜べない理由があります

それを示しているのは、IT Viecの調査レポートに載っていたベトナムにある企業の出身国別のITエンジニアの平均給与です。

<表14>

企業の出身国 平均給与(ドン)
ベトナム 37,300,000
日本 40,100,000
アジア(日本以外) 46,000,000
ヨーロッパ 51,100,000
北米(アメリカ&カナダ) 55,100,000
オーストラリア&ニュージーランド 59,900,000

 

日系企業のITエンジニアの平均給与は、かろうじて地場のベトナム企業よりは高いものの、他の外資企業と比べてだいぶ安いことが分かります。

つまり発注元である日本企業の円建て予算に合わせる形で、ベトナムの中でも比較的安い給与の人材を集めてアサインしている状況を物語っています。

それは、ベトナムの中でも比較的優秀なITエンジニアが、給与の安い日系企業を選ばず、稼げる他の外資企業を選好しているということでもあります。

安い人月単価を実現するために結果的にベトナムにおける優秀なITエンジニアを買い負けしている、それはビジネス拡大のために不可欠なITエンジニアの不足に悩む日本企業にとって望ましいことなのでしょうか?

5.まとめ

  • 2026年後半、ベトナムITエンジニアの平均給与から算出される推定人月単価は、約61万円(ホーチミン64万、ハノイ58万、ダナン56万)と考えられる。
  • ベトナムでは、スキルや経験に応じてITエンジニアの給与格差が非常に大きいため、経験年数が浅くスキルが低いと考えられる人材で問題ないなら、大幅に安い人月単価も計算上は可能となる。
  • ただしそういった安い単価でアサインできた場合は、該当人材が短期間で入れ替わることで生産性が上がらない(見えないコストが発生する)可能性も高いことを考慮する必要がある。
  • ビジネス環境を踏まえると2026年のオフショア開発単価(シニアエンジニアの費用相場)は、推定人月単価よりも低く、オフショア開発白書に記載されていた単価に近いか、その間である人月50万円台に落ち着く可能性が高そう。
  • しかし推定値よりも安い人月単価の実現には、ベトナムの中でも比較的スキルの低いエンジニアがアサインされている、真に優秀な層を確保できていないことも踏まえて考える必要がある。

 

よって現地給与相場を踏まえたうえで人月単価の絶対値高低だけで良い悪いと判断せず、ベトナムの開発力を使うことで自社のビジネスにどう活用していきたいのか、どのようなIT人材(才能)を必要としているのかを含めて判断することが、本当の意味でのベトナムオフショア開発成功につながるカギと考えられます。

 


参考データ

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