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「ベトナムでのオフショア開発」と聞くと、「ラボ型開発」をイメージする方も多いのではないでしょうか。
実際、日本企業が利用するオフショア開発先にはさまざまな国がありますが、ベトナムではラボ型開発が広く活用されています。
では、なぜラボ型開発とベトナムは相性が良いのでしょうか?
今回は、ラボ型開発の特徴を整理したうえで、なぜベトナムがラボ型開発の拠点として選ばれているのか、その理由を5つのポイントから解説します。
1.ラボ型開発とは?
まず、ラボ型開発について簡単に整理しておきましょう。
ラボ型開発とは、システムやアプリを「完成品として納品してもらう」請負型とは異なり、一定期間、専属の開発チームの稼働時間を確保し、継続的に開発を行う契約形態です。
日本では、準委任型と呼ばれる契約形態になります。
例えば、
-
- PM:1名
- エンジニア:4名
- デザイナー:1名
といった開発チームを一定期間確保し、そのチームに対して継続的に開発タスクを依頼していきます。
請負型の場合、「このシステムを○月までに完成させる」というように、あらかじめ仕様や成果物、スケジュールを定義して発注するケースが一般的です。
一方、ラボ型では、開発の状況や市場の変化に応じて、柔軟に開発内容を変更できます。
例えば、
「開発メンバーで話し合った結果、まずこの機能を作ってみよう」
「ユーザーの反応を見て、次の機能を決めよう」
「競合会社が新しい機能をリリースしたので、急遽この機能を優先して開発しよう」
「今月は新機能よりも保守・改善を中心にしよう」
といった、変化を前提とした開発がしやすくなります。
そのため、特にSaaS、Webサービス、スマートフォンアプリ、AIサービスなど、リリース後も継続的な改善が必要なプロダクトとの相性が良い開発方式です。
2.なぜ今、ラボ型開発が選ばれているのか?
ラボ型開発が注目される背景には、ソフトウェア開発そのものの変化があります。
以前のシステム開発では、
- 要件を決める
- 設計する
- 開発する
- テストする
- 完成したものを納品する
という流れが一般的でした。
しかし現在では、クラウドやスマートフォン、SaaS、AIなどの普及によって、サービスを「作って終わり」にするのではなく、
リリースする → ユーザーの反応を見る → 改善する → またリリースする
という継続的な開発が重要になっています。
さらに生成AIの登場により、新しいサービスや機能を短期間で試すことも可能になりました。
一方で、
-
- 「試したいアイデアはあるが、社内にエンジニアがいない」
- 「開発案件が増えているが、国内だけでは人員を確保できない」
- 「一度作って終わりではなく、継続的に開発できるチームが欲しい」
といった課題を抱える企業もあります。
こうした課題に対して、ラボ型開発は適した選択肢の一つとなります。
つまり、ラボ型開発の本質は、単に「安く外注すること」ではありません。
必要な開発リソースを継続的に確保し、自社の開発力を補完すること。
これが、ラボ型開発の大きな特徴です。
3.なぜラボ型開発の拠点としてベトナムが選ばれるのか?
では、日本企業が利用するオフショア開発先は他にもある中で、なぜラボ型開発では「ベトナム」が選ばれるのでしょうか。
その大きな理由は、ラボ型開発に適した条件を総合的に満たしているからです。
ラボ型開発では、単にエンジニアを確保できれば良いわけではありません。
継続的に開発できる人材がいること、日々のコミュニケーションが取りやすいこと、日本側の意図を正確に理解できること、新しい技術に対応できること、そして長期間にわたって開発を続けられる環境があること。
こうした複数の条件が求められます。
ベトナムは、これらの条件を比較的バランスよく満たしていることが特徴です。
ここからは、ベトナムがラボ型開発と相性が良い理由を5つに分けて見ていきます。
3-1.ITエンジニアの層が厚く、人材を確保しやすい
ラボ型開発では、エンジニアを1人確保するだけでは十分ではないことが多くあります。
重要なのは、
「必要な人数を、必要なスキル構成で、チームとして確保できるか」
という点です。
開発内容によって異なりますが、例えば、
-
- フロントエンドエンジニア
- バックエンドエンジニア
- モバイルアプリエンジニア
- QA
- UI/UXデザイナー
- PM
- ブリッジSE
など、複数の役割を組み合わせる必要があります。
さらに、プロジェクトの状況によっては、短期間であっても、
「フロントエンドエンジニアを2人増やしたい」
「こういったスキルを持ったエンジニアが必要になった」
「iOSのエンジニアを一時的に増やしたい」
といったことも起こります。
その際に重要になるのが、その国にどれだけのIT人材がいるのかという「人材の厚み」です。
ベトナムは過去20年以上、国策としてIT人材の育成に力を入れてきたため、IT人材の母数が比較的多く、こうしたチーム組成や拡張に対応しやすい特徴があります。
仮に開発会社内に該当する人材がいない場合でも、新規採用を行いやすく、場合によっては外部の別会社から一時的に人材を確保することも可能です。
一方、日本国内では、予算があっても「そもそも採用できない」というケースもあります。
その意味でベトナムは、単に「安く人を雇える場所」ではなく、開発チームという組織を作るための選択肢が豊富な人材市場として価値があります。
3-2.日本との時差が小さく、コミュニケーションしやすい
ラボ型開発では、開発チームとの日々のコミュニケーションが重要になります。
ベトナムと日本の時差は2時間です。ベトナムにはサマータイムもありません。
例えば、ベトナムが11時であれば、日本は13時です。
ベトナムの勤務時間を8時半~17時半とした場合、日本時間では10時半~19時半となります。
この時差の小ささは、ラボ型開発において大きなメリットとなります。
例えば、
「仕様について確認したい」
「今日の優先順位を変更したい」
「この機能はいったん止めて、別の機能を優先したい」
といった確認や判断を、開発チームとリアルタイムでやり取りしながら進めることができます。
一方、日本との時差が大きい国の場合、どちらかが営業時間外に対応しない限り、リアルタイムでのコミュニケーションが難しくなることがあります。
その点、ベトナムであれば、日本の営業時間とベトナムの勤務時間が大きく重なります。
オンライン会議、チャット、タスク管理ツールなどを活用しながら、日常的な開発コミュニケーションを行いやすい環境にあると言えます。
また、実際に開発メンバーと会って直接話したい、チームビルディングをしたいという場合にも、日本の地方都市を含めた直行便の多さや、フライト時間が5~6時間程度と比較的短いこと、日本国籍者はビザなしで渡航できることなど、物理的な距離の近さもメリットになります。
3-3.日本語対応が可能で、日本企業向けの開発経験を持つ人材が多い
オフショア開発先となる国は世界中に数多くあり、世界的にはインドが代表的な開発拠点の一つです。
しかし、日本企業から見ると、インドではなくベトナムを選ぶケースも多くあります。
その背景にある重要な要素の一つが、日本語対応です。
英語でのコミュニケーションに慣れていない日本企業にとって、日本語で意思疎通ができることは大きなメリットになります。
特にラボ型開発では、単純なプログラミング能力だけではなく、
「日本側の意図を正しく理解し、開発チームに伝える能力」
が重要になります。
例えば、
「この仕様で作ってください」
という一言であっても、
-
- なぜこの機能が必要なのか
- ユーザーにどう使ってほしいのか
- 今後どのようなサービスにしていきたいのか
まで理解しているかどうかで、完成するプロダクトの質は変わります。
そして、こうしたコミュニケーションはラボ型開発では頻繁に発生します。
そのため、日本語対応が可能なブリッジSEやPMの存在が重要になります。
ベトナムでは、日本語でコミュニケーションできる人材が比較的多く、日本企業向けの開発経験を積んできた人材も多いという特徴があります。
長年、日本企業がオフショア開発先としてベトナムを選んできたことで、日本企業との開発に必要なコミュニケーションや仕事の進め方についての知識が蓄積されていることも、ラボ型開発との相性の良さにつながっています。
3-4.新しい技術への適応力がある
ラボ型開発で扱われることが多いソフトウェアには、
-
- スマートフォンアプリ(iOS / Android)
- Webサービス・ECサイト・SaaSプラットフォーム
- AIや最新フレームワークを用いたシステム
などがあります。
このような開発では、新しい技術を継続的に学び、知識をアップデートしていく必要があります。
例えば、生成AIを組み込んだサービス開発を考えてみても、1年前に生成AIで実現できたことや提供されていたサービスと、現在では大きく状況が変わっています。
そのため、ラボ型開発では、決められた技術を使って開発するだけでなく、新しい技術を学び続けることが重要になります。
この点でベトナムとの相性が良い理由の一つが、エンジニア自身が学習してスキルアップすることが、給与アップにつながりやすい市場環境です。
ベトナムには、日本企業だけでなく、欧米企業や中国、韓国、台湾、シンガポールなど、さまざまな外資企業が進出し、ソフトウェア開発を行っています。
こうした企業では、エンジニアの能力や市場価値を見て給与が設定されるため、自らスキルアップして市場価値を高めようとする人材も多くなります。
また、人材の流動性が高いことで、欧米企業などで新しい技術を使った開発経験を積んだ人材が、別の開発会社へ移ることもあります。
こうした人材市場の特性が、新しい技術へのキャッチアップという点で、ベトナムとラボ型開発の相性の良さにつながっています。
3-5.長期的に開発を続けやすい安定した環境がある
ラボ型開発では、初期リリースがゴールではなく、そこから継続してサービスを改善していくケースが多くあります。
請負型開発では、納品が完了するとプロジェクトはいったん終了することが一般的ですが、ラボ型開発では、
初期リリース → ユーザーの利用状況・フィードバックを確認 → 改善 → 追加開発
というサイクルを繰り返しながら、ビジネスを成長させていくことがあります。
そのため、ラボ型開発を行う場所についても、「長期にわたって一緒に開発を続けられる環境なのか」という視点が重要になります。
もちろん、実際の開発パートナーとなる会社の経営状況は重要です。
それに加えて、その会社が拠点を構える国のカントリーリスクについても考える必要があります。
オフショア開発先となる国の中には、政治情勢などによって事業継続が難しくなるケースもあります。
例えば、以前オフショア開発先として注目されたミャンマーでは軍事クーデターが発生し、国内の一部エリアでは内戦状態となりました。
また、ヨーロッパ企業のオフショア開発先であったウクライナはロシアとの戦争に突入し、同様に安価な開発先として注目されていたベラルーシも、戦争や経済制裁などの影響により取引が難しい状況となっています。
また、戦争のような極端な状況でなくても、オフショア開発では国際関係や経済環境などを含めたカントリーリスクを考慮する必要があります。
その点、ベトナムは政治的に安定しており、対日関係も良好です。
長期間にわたって同じチームと開発を続けるラボ型開発において、こうした安定した環境は重要な要素の一つと言えるでしょう。
4.ラボ型開発でベトナムが選ばれる理由は「総合的なバランス」
ここまで、ベトナムがラボ型開発の拠点として選ばれる理由を5つ紹介しました。
改めて整理すると、
- ITエンジニアの層が厚く、人材を確保しやすい
- 日本との時差が小さく、コミュニケーションしやすい
- 日本語対応が可能で、日本企業向けの開発経験を持つ人材が多い
- 新しい技術への適応力がある
- 長期的に開発を続けやすい安定した環境がある
という点です。
ここまで読んで、「コストは理由にならないの?」と思われる方もいるかもしれません。
かつてのベトナムオフショア開発では、確かに「コスト」は大きなメリットの一つでした。
しかし現在では、エンジニアの人件費・給与水準の上昇に加えて、近年の円安の影響もあり、以前のように「日本より圧倒的に安い」という特徴は失われつつあります。
ベトナムでは、地域や経験年数による給与格差が日本以上に大きいため、スキルの低い人材であれば現在でも安い単価で確保できるケースがあります。
ただし、ラボ型開発で求められるのは、単に安価な人材ではありません。
必要なスキルを持った人材を確保し、チームとして継続的に開発できることが重要です。
そのため、現在のベトナムを評価する際には、コストだけを切り離して考えるのではなく、
「人材の厚み」
「コミュニケーションのしやすさ」
「日本語対応」
「新しい技術への適応力」
「長期的な安定性」
といった要素と合わせて考えることが重要です。
コストの絶対値だけを見れば、ベトナムより安価な開発先が見つかる可能性もあります。
一方で、必要な人材を確保できるか、日本側と円滑にコミュニケーションできるか、新しい技術に対応できるか、長期的に開発を続けられるかまで含めて考えると、ベトナムはバランスの良い選択肢となります。
つまり、ベトナムがラボ型開発で選ばれている理由は、何か一つのメリットが突出しているからではありません。
価格・人材・技術・コミュニケーション・リスクといった複数の要素を総合したときに、ラボ型開発を継続していくためのバランスが良い。
これこそが、ラボ型開発とベトナムの相性が良く、日本企業がラボ型開発でベトナムを選ぶ理由ではないでしょうか。

